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特別企画! 食事療法学会でスペシャル対談が実現
平成28年度診療報酬改定の狙いとポイントは?

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食事療法学会、約1,200人が参加

管理栄養士・栄養士が集う第35回食事療法学会(市江美津昭学会長)が平成28(2016)年3月5日、6日、愛知県産業労働センター「ウインクあいち」で開かれました。学会2日目には今注目が集まる診療報酬の改定について厚生労働省担当官の講演や、特別企画の対談が実現。約1,200人が参加し、関心の高さがうかがえる大盛況の学会となりました。また、メインホールだけでは参加者を収容できず、急遽サテライト会場を設けその対応にあたりました。

厚生労働省担当官「平成28年度診療報酬改定の概要」を講演

講演には今回の改定に大きく関わった厚生労働省保険局医療課の塩澤信良係長が登壇。「平成28年度の診療報酬改定(栄養関係)の概要」と題して、栄養に関する診療報酬の改定のポイントについて解説いただきました。

改定の主な狙いとして挙げられたのは、団塊の世代が全て75歳以上となる2025年に向けた「地域包括ケアシステムの構築」です。これは住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを最後まで続けることができるシステムを作っていこうというもの。医療、介護、予防、住まい、生活支援が包括的に確保される体制を目指す中で、管理栄養士の存在がますます重要になっていきます。医療と住まい、介護と住まいなどの連携において、管理栄養士が「食事」という重要な"核"を担っているからです。

今回はそうした観点から、栄養関係の診療報酬を大幅改定。特に栄養食事指導料について、大きな拡充が行われました。

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栄養食事指導料20年ぶりの評価見直し-外来・入院栄養食事指導料は、初回260点(2,600円)にアップ-

講演では地域包括ケアシステム推進の取り組み強化に関連するものとして、管理栄養士が行う栄養食事指導について、以下3点の見直しを行うことを説明されました。

  1. ①がん、摂食・嚥下機能低下、低栄養の患者に対する治療食の指導を、個別栄養食事指導料の算定対象に追加する(このほか、難治性てんかん等の患者向けの「てんかん食」の指導を、個別・集団栄養食事指導料の算定対象とする)。
  2. ②外来・入院栄養食事指導料について、指導時間の要件と点数を見直す(改定前:概ね15分以上で130点→改定後:初回概ね30分以上で260点(入院栄養食事指導料2は250点)、2回目以降(入院栄養食事指導料は「2回目」)概ね20分以上で200点(同190点)にアップ。
  3. ③在宅患者の実状に応じた指導となるよう、指導方法に関する要件を緩和する(調理実技を必須としない)。

①に関しもっとも気になるのは、何をもって「低栄養状態」と判断するのかという点かもしれません。これについては、「血中アルブミンが3.0g/dL以下である患者」と「医師が栄養管理により低栄養状態の改善を要すると判断した患者」のうち、いずれかの条件を満たすこととされています。低栄養状態の患者に対し栄養食事指導を行うには、もちろん医師の判断、指示が必要ですが、栄養状態のアセスメントや医師への積極的な働きかけなど、管理栄養士の役割は非常に大きいといえるでしょう。

②に関わる外来栄養食事指導料において最も重要な改善点は、「少なくとも熱量・熱量構成、蛋白質量、脂質量についての具体的な指示を含まなければならない」とされていた従来の規定から、「少なくとも」が削除された点です。平成28年度からの医師の指示は特に重要な栄養素の量などの情報のみでもよく、医師から特段の指示がない栄養素の量などについては、管理栄養士が適切に評価、判断し、そのプロセスを栄養指導録に記載し、医師にフィードバックするという流れになります。

③については在宅療養患者の実状や管理栄養士による訪問栄養食事指導の効果が示された論文をもとに、在宅患者訪問栄養食事指導料の算定要件を緩和し、調理実技は必須としないこととされました。

また、改定前は必ずしも明確化されていなかった算定単位の解釈が整理され、特に定めのない限り、「週」単位は日~土曜日、「月」単位は月の初日~末日と解釈することが明記されました。例えば、入院栄養食事指導料については、金曜に初回の指導を行い、翌週の月曜に2回目の指導を行った場合でも、2回目の栄養食事指導料を算定できることが明確化されました。このことに関して塩澤係長は「例えば『週』単位については、必ずしも『7日に1回』に限られるわけではないことが明確化されたが、必要性を見極めて、患者にとって有益になる中身の濃い指導を展開していただきたい」と訴えました。

また、医療保険制度を持続可能なものとする一環として、経管栄養の場合の食事療養費について見直しが行われました。これは、経腸栄養用製品には医薬品として薬価収載されているものと食品とがあり、医薬品扱いの製品(薬価調査を基に市場実勢価格に応じた薬価が設定されている)を用いた場合に比べて、入院時における給付額は、一般的な使用の場合、食品の方が高い状況にあることを踏まえ、給付額の均衡を図る観点から、栄養管理が概ね経管栄養法による市販の流動食によって行われている患者の食事療養費を、原則として約1割引き下げるというものです。

その他チーム医療の取り組みに関して、今回の改定で新設された認知症ケアの評価のうち、認知症ケア加算1については、患者の状態に応じて、認知症ケアチームに管理栄養士も参加することが望ましいと示されました。また、胃瘻造設術及び胃瘻造設時嚥下機能評価加算については、一定条件の場合に施設要件として新たに加えられる「術前カンファレンスの実施」において、管理栄養士の参加が望ましいと示されました。

「素晴らしい改定」と感謝−−対談で石川理事

講演に続いて、食事療法学会の特別企画として、厚生労働省の塩澤係長と日本栄養士会、石川祐一理事とのスペシャル対談が開催されました。

石川理事は今回の改定について「本当に素晴らしい改定内容であった」と感謝の意を述べるとともに、「点数がアップしたことや対象疾患が広がったことだけで満足するのではなく、その結果を示すことが大事。今回の改定による取り組みが、『患者にとって、医療経済効果としてこんな良い結果に結びついた』といった報告を来年の食事療法学会等で発表してほしい。できればそれを論文にすることが、今後の管理栄養士の地位向上に貢献できる」と来場者に呼び掛けました。

対談で塩澤係長は「地域包括ケアシステムをしっかり築いていくことは最重要課題」と位置付け、「退院後の食事をどうすればいいか――これは、地域包括ケアシステムを推進する上で非常に重要になってくる問題。こうした中、単に栄養素レベルの話ではなく、患者さんの様々な生活条件や嗜好等も踏まえ、食品、料理、ひいては食事レベルまで、患者さんに寄り添い、実行可能性の高い食事を提案できるのは管理栄養士しかいない」と重要性を強調。「我が国にとって極めて重要といえる構想の中で、このような管理栄養士の専門性が重視され、さらなる活躍への期待から今回の指導料評価につながった」と説明しました。

また、「COPD(慢性閉塞性肺疾患)や摂食障害で低栄養のケースは」という石川理事の質問に対し、柔軟に対応できるよう、"病名による縛り"はかけなかったことを明らかにしました。

さらに、先述の栄養食事指導料に関する改善点、すなわち「少なくとも」が削除され、新たに「熱量・熱量構成、蛋白質、脂質その他の栄養素の量、病態に応じた食事の形態等に係る情報のうち医師が必要と認めるものに関する具体的な指示を含まなければならない」とされたことの持つ意味について石川理事から再確認があり、塩澤係長からは「他の医療スタッフとの連携を図る観点から、医療従事者が共通理解できる内容を、数値設定の考え方などとセットで論理的かつ明快に示すことが重要になってくるであろう」と記録方法及び内容の重要性を重ねて訴えました。

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専門管理栄養士は学会で発表を

対談に先立ち、石川理事は日本栄養士会が描く病院管理栄養士・栄養士のビジョンおよび今回の診療報酬改定要望との関連について説明しました。

5年~10年後の病院管理栄養士のあるべき姿として、栄養指導担当者の配置、教育担当者の配置及び卒前・卒後教育の充実、50床に1人の管理栄養士の配置などを示しました。今回の改定で、この中のいくつかの項目に対し目標達成に向けた解決策となったことが説明されました。また28年度から認定試験が始まる認定管理栄養士制度の充実や、各管理栄養士が将来どの領域を中心に知識を深めるか、その形として最終的には専門管理栄養士を目指せる制度を構築中であるとの方向性が示されました。これまでに「がん病態栄養専門管理栄養士」はすでに300名が誕生していますが「今後、専門管理栄養士の評価を上げるためには学会発表や論文投稿で取組み結果を表に出していただきたい」と理解を求めました。塩澤係長からは「論文のような形になっていることが今後その人たちの評価を高めることにもつながってくるのではないか」と平成30年度の改定に向けたアドバイスをいただきました。


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