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【資料・事例】【地域活動】嚥下食を通し地域の交流、管理栄養士ならではの取り組みとは?!

全国からこんにちは!/フリーで活躍する全国7000人の"働く知恵"を発信!! vol.2

<西谷幸子(にしたにさちこ)和歌山県>

嚥下食を医療機関から地域へ

 国保野上厚生総合病院は、和歌山県北西部に位置しており、65歳以上が約40%、75歳以上が約24%と超高齢化が進む地域にあります。「へき地中核病院」として嚥下食の安全性ついて患者・介助者に安心してもらえる正確な情報の提供に努めるとともに、個々の患者にあった安心・安全な食事を提供しています。高齢や疾患などのため嚥下障害を持つ人にとって、口から入ってきた飲み物や食べ物、唾液などが気管に入る事を防ぐため、飲み下しやすいように工夫した食事は必要不可欠です。 

 その活動の中で、患者が退院後、施設に転院すると誤嚥性肺炎を生じ、入退院を頻繁に繰り返してしまうという問題がありました。この問題の解決策を模索し、国保野上厚生総合病院周辺にある特別養護老人ホームや介護老健福祉施設に対し、食事調査を行いました。その結果、各施設の嚥下食等の食事を一覧表化して施設間で共有することで、退院する患者さんに対して、あらかじめ転院先の食事形態に合わせた嚥下食提供を行うことが可能となりました。また、近隣施設と嚥下食調理講習会や交流会を重ねたことで誤嚥性肺炎の繰り返しが減少してきました。

医療と福祉の嚥下食連携
 
 平成23年4月に海南保健所の管内を中心とした、医療・福祉施設の管理栄養士・栄養士によって「嚥下食検討会」を立ち上げました。平成27年11月には、管内にあるどの病院・施設に行っても嚥下食の内容がわかるように、写真入りの「海南・海草嚥下早見表」を作成し、管内の医療と福祉の連携ができるようになりました。

嚥下食を通した地域活動へ


 「地域ふれあい嚥下教室」を定期的に開催し、紀美野町48カ所にある「サロンの会」に出前講座として、嚥下食を、患者・介助者含めた地域の方に実際に食べてもらい、理解を促しています。今、嚥下食を必要としている方や、食事に不自由を感じている方にも、嚥下食のイベントを主催して、日常から関心を持ってほしいとの思いで取り組んでいます。

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「地域ふれあい嚥下教室」の様子

利用者の声に答えて、食のサポートステーション"まごころ"開設

 こうした活動の中、新たな問題が出てきました。院内には売店が無く、近隣に嚥下食品を扱う店も無く、患者家族や訪問看護師やケアマネージャーから「嚥下食品・口腔ケア商品・栄養剤等」どこで購入できるかとの問い合わせがありました。そこで、必要なものがないなら作ってしまおう!ということで、ケース単位からではなく、1個からでも気軽に買えて、必要時にすぐに提供できる売店を目指し、食のサポートステーション"まごころ"を院内に開設しました。今では、多くの患者や地域の方にさまざまな商品を提供できるようになりました。

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食のサポートステーション"まごころ"

地域との連携を深めた、震災食への取り組み

 嚥下食を通し、2015年より能登半島の「食力の会(しょくりきのかい)」との交流が始まりました。「食力の会」とは、能登地域の病院・施設・在宅において食支援に関わる全職種を対象に2011年に発足し、現在は管理栄養士を中心に20名近くのメンバーで活動している会です。主な活動としては、地域の他施設・他職種で共通認識できる「食の情報」ツール(食形態マップや食事チェックシートなど)を作成し発信したり、地域住民に向けた「食」の啓発活動を行っています。そうした地域で活動する「食力の会」との交流の中で、(公社)石川県栄養士会能登支部栄養士会が取り組んでいる「必ず役立つ震災食」を学び、院内の災害非常食の中に震災食を導入しました。災害時に不自由な食生活となるのは誰にも共通していますが、嚥下困難な方たちは、より厳しい状況になり、栄養不足による体力の低下が懸念されるため、災害時にも対応できる嚥下食を提案することは、その予防となります。
 今後は更に、環境に配慮した低エネルギーで作る震災食の提供や、嚥下困難者への嚥下食の宅配ができないか等も模索しています。

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地域防災訓練時の震災食紹介の様子

 医療から福祉、在宅介護につながるよう、事業を展開して参りましたが、これからも管理栄養士として、いつも"患者に寄り添いたい"、"相手の気持ちを大切に"の思いを胸に、日々、業務に携わっていきたいと思います。

西谷幸子◎にしたにさちこprofile
卒業後、病院に栄養士として2年間勤務を経て、国保野上厚生病院に勤務。2002年より同院栄養課課長、2016年退職後、地域活動事業部所属となり現在に至る。地域活動を通し、嚥下食や食の大切さを伝えている。

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