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テーマは「つなぐ」、災害支援チーム「JDA-DAT」の熊本地震における活動とこれから

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東日本大震災をきっかけに設立された「日本栄養士会 災害支援チーム(JDA-DAT)」。日本栄養士会の常務理事であり、JDA-DATの総括を担う下浦佳之氏に、JDA-DATの目的、2016年4月に発生した熊本地震における活動、そして、JDA-DATの今後の展望についてお話を伺いました。

―JDA-DATは具体的にどのような支援を行うチームでしょうか?

JDA-DATは、大規模自然災害等の発生時に被災地で栄養・食生活の面で人的支援、物的支援を行うことを目的とした管理栄養士・栄養士で構成される災害時における栄養支援チームです。災害が発生した場合、被災都道府県の栄養士会や厚生労働省などから要請を受け、発災後72時間以内に支援に向けて活動を開始します。

対象者は、子ども、妊産婦、高齢者、そして、慢性的なご病気を抱える方々など要配慮者が中心です。ひとりひとり、必要とする支援は異なりますので、個別にきめ細かい対応が求められます。発災後、避難所等での災害関連死などの二次的な被害をなんとか食い止めようという思いで立ち上げました。

―これまでの活動歴について教えてください。

日本栄養士会が東日本大震災で初めて人的な支援を行った際、さまざまな課題に直面しました。たとえば、発災当初の派遣体制や情報収集の問題、管理栄養士・栄養士の災害時の栄養に関するスキルの問題、派遣者の食事・宿泊場所の確保の問題等。それによって支援する側も支援される側も非常に厳しい状況の中、活動を行っていました。そこで得た経験をもとに、JDA-DATの立ち上げにあたっては、支援・受援者側の両方が円滑に動けるよう体制作りの必要性を感じました。平成27年9月に茨城県常総市を中心に発生した関東・東北豪雨災害がJDA-DATとして初めて先遣隊だけでなく本隊を派遣した支援活動でしたが、支援・受援者側双方に配慮された体制のもと、滞りなく支援を行うことができました。また、この時に確立された支援方法のひとつに、特殊食品等の物資の円滑な搬送を行う「特殊栄養食品ステーション」の設置があります。この経験は、今回の熊本地震でも大いに生かされ、多くの要配慮者に必要な物資を届けることができました。

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―熊本地震発生からJDA-DAT出動までの流れについて聞かせてください。

4月14日夜に前震が発生し、すぐに熊本県の栄養士会長に連絡を入れました。その時点では特に大きな被害は出ていないとのことでしたが、いち早く熊本県栄養士会が災害対策本部を立ち上げようと4月15日に動き始めました。そのさ中、4月16日未明に本震が発生します。大変な被害が出て被災者が大勢いることがわかり、すぐに4月17日に鹿児島県JDA-DATから先遣隊を被災地に送り、被災地の情報収集を行いました。その後、4月19日に私(下浦)を含む本隊が入り、支援活動を開始しました。

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―熊本地震では具体的にどのような活動を行いましたか?

まず、災害派遣医療チーム(DMAT)や日本医師会災害医療チーム(JMAT)ら、医療救護班の一員として帯同し、避難所を巡回し、栄養アセスメントを実施し、要配慮者に対して支援を行うのが大きなミッションです。巡回を行う中で、たとえば医師が「この方、糖尿病の疾患があるから、きちんとした食事が摂れているかどうか確認をお願いします」と言えば、管理栄養士がその方に対して食と栄養の面においてサポートやアドバイスを行っていきます。

一方、物資の面での支援も行います。災害支援車両JDA-DAT河村号による避難所への支援物資等の搬送および巡回栄養相談を行いました。また、日本栄養士会の特殊栄養食品ステーションを各地のサテライトとして設置し、国をはじめとするさまざまな機関・企業・学会等から届いた要配慮者向けの支援物資を仕分けし、必要なものを必要とする人に確実に届くようサポートを行いました。

さらに、被災者の方々の休養を目的として、防衛省のチャーターしたホテルシップ「はくおう」に宿泊される方の食事をサポートする支援活動も行いました。そこで提供される食事及び栄養面で配慮が必要な方の食支援を行うものです。船内ではバイキング形式で食事が提供されるのですが、食物アレルギーや糖尿病など特殊な疾患をお持ちの方がいらっしゃるので、その際にJDA-DATが個別に食事内容の聞き取りを行い、各人にあった食事を提供するほか、赤ちゃん向けに離乳食を作るなどのサポートを行いました。

―今回、何名の方が活動に参加されたのですか?

6月7日の時点で、延べ936名のJDA-DATのメンバー等が支援活動に携わっています。6月1日付でDMAT・JMAT等の医療救護班が撤退することが決定し、それに伴い、被災地である熊本県栄養士会以外の全国のJDA-DATメンバーも撤収しました。今後は、被災地の管理栄養士・栄養士たちが中心となって引き続き、サポートを続けていく形になります。しかし、今後、何らかの支援要請があれば協力することは変わりません。

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―JDA-DATの今後の展望について教えてください。

現在、約1,700名の栄養士がJDA-DATメンバーとして所属しており、内訳は、リーダーが約330名、スタッフが約1,300名です。現場での仕事はチーム活動で行われ、1つのチームは1人のリーダーのもと、3~4人のスタッフが属します。東京オリンピックまでに、1,000人のリーダーと4,000人のスタッフ、計5,000人、つまり、JDA-DATを1,000チーム育成しようというのが現在の目標の1つです。日本栄養士会ではリーダーとして、各都道府県の栄養士会会長の推薦等がある者が受けることができるリーダー育成研修及びリーダースキルアップ研修、都道府県栄養士会ではスタッフ研修と、より実践につながる専門知識と技術を身につけるために研修を定期的に行っています。

―JDA-DATを目指す管理栄養士・栄養士に向けてひと言、お願いします。

災害支援活動を行うにあたって熱意があることはもちろん大切ですが、熱意だけでは被災者や同じ支援者にとって逆に負担になってしまいます。自分が決められた期間等の中でできるところまでやって、あとは次の者に、「つなぐ」という意識をもって活動にあたることが重要だと思っています。我々はひとつの組織、チームとして活動します。管理栄養士・栄養士としてのサポートをしながら、専門外の問題に直面した時にはその分野の専門職につなぐことができるかどうか。つまり連携の重要性です。たとえば「ちょっとこの人、精神的に不安定になっているな」と思えば、精神科医師のチーム(DPAT)に繋ぐ、おばあちゃんが「肩が痛い、腕が痛い」と言っているなと思えば、リハビリチーム(JRAT)や鍼灸師を紹介するというように専門職チームに「つなぐ」ことが被災者にとって一番必要なことです。そのためにも他職種の専門性や動き等を学び、連携していくことが大切です。同時に、管理栄養士・栄養士だからといって、その関連業務だけをすればよいというものでもありません。自分たちの枠にとらわれずに、人としてできることは何でもする、被災者にとって何が必要なのか、どれがベストな選択かということを考えながら行動することが大切です。

「食べることは、生きること」JDA-DATのメンバーとして一緒に活動してみませんか。

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