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スポーツ栄養学の第一人者が語る
"プロ"にしかできない仕事とは?

トップランナーたちの仕事の中身#001

鈴木志保子さん(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科教授/管理栄養士/公認スポーツ栄養士)

img_02_01.jpgアスリートを栄養・食の面からサポートする公認スポーツ栄養士。この分野のパイオニアであり、「公認スポーツ栄養士」の創設に携わった鈴木志保子先生(神奈川県立保健福祉大学教授)。公認スポーツ栄養士の具体的な仕事内容や、今後の展望についてお話を伺いました。

―公認スポーツ栄養士の具体的な業務とは?

競技力の向上や健康の維持・増進を目的とした人に対して栄養管理(スポーツ栄養マネジメント)をすることが仕事です。対象の範囲は、プロ、アマ、ジュニアを問わず競技力向上を目指すアスリート、体力の維持・増進や生活習慣病の予防・改善など自分のための目的を持って身体活動量を多くしている全ての人たちです。食事管理、サプリメントの管理、水分補給の管理、試合期の管理、栄養教育などの栄養・食に関するあらゆるマネジメントを行うことになります。たとえば、睡眠の状況が悪く食欲が減退しているならば、睡眠の改善を図るなど、サポートは生活全般にまで及びます。

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―平成28(2016)年1月より、日立ソフトボール部で公認スポーツ栄養士として活動されていますが、具体的にはどのような指導をされているのですか?

チームの目標を達成するために、監督、コーチ、トレーナー、マネージャーと一体となり、スポーツ栄養マネジメントに従いアスリートへ栄養サポートを行っています。

具体的には、アセスメントの結果から個人目標を決定し、栄養補給計画を立てます。栄養補給計画に対して、アスリート自身が行う行動計画を立案し、その計画の実行率を高めるためにスポーツ栄養の知識やスキルを集団教育によって習得、アスリートの体格や身体の特徴に合わせた個別面談を実施しています。また、練習や試合の現場での環境整備と指導も行っています。

日立では、食事の献立などの給食管理は別途、管理栄養士が行いますが、その内容や喫食状況を確認し、管理栄養士と連携することも仕事の1つです。私が毎日いることができないので、管理栄養士や食事を調理してくださる調理師のみなさんがしっかりとアスリートの状況を報告してくださるなど、とてもよい連携が取れています。また、監督、コーチ、トレーナー、マネージャーから、練習、試合、遠征など、さまざまな場面の情報を共有し、サポートに反映させることができています。

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―平成32(2020)年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、今後、取り組みたいと思っていることはありますか?

アスリートについては、オリンピック・パラリンピックに出場する選手とメダルを獲得する選手の数を増やすために、ジュニア期からのスポーツ栄養マネジメントの活用を進めていきます。

また、現在、数名のパラリンピックのアスリートのサポートを行っており、その中で、パラリンピックのアスリートの栄養に関する基準などが、日本ではほとんどないという現状に気づきました。たとえば、頸髄損傷のアスリートの場合、健常者と同じ考え方でエネルギー摂取量を算定すれば、体重が増加していきます。当たり前のことなのですが、「では、どうすればよいか」をある程度示した基準や適切な指導方法がありません。これから作ろうと思っています。また、車いす用の家庭で使える体重計があるととても役に立つので、これから企業の方にお願いしたいと考えています。日本のパラリンピックのアスリートたちがより強く活躍できるように活動していきます。

また、オリンピック・パラリンピックは国民がスポーツの楽しさを感じる絶好の機会です。この機会に体を動かすことと、栄養・食のかかわりについてスポーツ栄養学の情報を提供し、スポーツの振興や健康維持・増進を進めていきたいと思います。さらに、スポーツ愛好者の増加によって、今後、公認スポーツ栄養士の需要は高まることが予想されます。一般の方が「パーソナル公認スポーツ栄養士」や「パーソナル管理栄養士」から栄養サポートを受けることで、健康管理の質が高まると、もっと日本全体が元気になっていくと考えています。病気になってから病院に行くのではなく、病気になる前に、日常的にプロにアドバイスを受けながら、健康を良好に維持する、そんな仕組みができたら素敵ですね。

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―最後に、公認スポーツ栄養士を目指す方にひと言アドバイスを。

公認スポーツ栄養士は、さまざまな角度で評価されることを念頭に仕事をします。なんとなく仕事をしても評価されません。スポーツ栄養マネジメントのシステムに従ってサポートすることにより、公認スポーツ栄養士自身も他者(個人やチームなど)に対しても仕事の評価をすることができます。評価することにより、次への質の向上につながります。スポーツ栄養マネジメントが現場で確実に実施できる管理栄養士に公認スポーツ栄養士の資格を授与します。プロフェッショナルとして誇りを持って仕事をしたいと思わなければ、養成課程でのインターンシップや検定試験を突破できません。強い信念と情熱をもって、取り組んでいただける方を歓迎します。

鈴木先生のインタビュー終了後、日立ソフトボール部の監督や選手にも、指導や講義を受ける立場としてお話を伺ったところ、先生の指導を受けるようになり、各人が自身の身体に向き合う意識が格段に高まったといいます。また、難しいことをシンプルにわかりやすく、日常の場面で実践しやすく落とし込んだ講義も好評です。「鈴木先生は、栄養学のスペシャリストとして、栄養学の観点から選手一人ひとりのコンディションを厳しく、かつ優しく見守ってくれている、安心感のある母のような存在」(鈴木由香監督)。長年のキャリアと経験が培った指導に、チームの皆から全幅の信頼を寄せられている鈴木先生。管理栄養士・栄養士の、目指すべき姿がそこにありました。

プロフィール:
昭和40(1965)年生まれ、東京都出身。神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科教授。管理栄養士。公認スポーツ栄養士。実践女子大学卒業後、同大学院修了。国立健康・栄養研究所研修生を経て東海大学大学院医学研究科を修了し、博士(医学)を取得。平成12(2000)年より国立鹿屋体育大学助教授を経て、平成15(2003)年から神奈川県立保健福祉大学栄養学科准教授、平成21(2009)年4月より現職。
全日本女子ソフトボール代表チーム(2008年9月まで)、マツダ株式会社陸上競技部、日立ソフトボール部、京都産業大学陸上競技部中・長距離ブロック、横須賀市立総合高校野球部などのトップアスリートから、ジュニアアスリートまで、多数のスポーツ現場で栄養サポートや指導を行うほか、公益財団法人 日本体育協会、公益社団法人 日本プロゴルフ協会、一般社団法人 日本女子プロゴルフ協会、スポーツ医科学センターが実施する講演などを全国で行っている。また、公益社団法人 日本栄養士会理事、NPO法人 日本スポーツ栄養学会理事、厚生労働省「運動基準・運動指針の改定に関する検討会」構成員、独立行政法人 日本スポーツ振興センター「平成22年度児童生徒の食事状況等調査委員会」などの委員長も務め、健康増進やメタボリックシンドロームの予防・改善、子どもの発育・発達についても、積極的に研究や指導を行っている。


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