管理栄養士・栄養士の役割拡大
日本栄養士会では、全国の管理栄養士・栄養士からのさまざまな声を集約し、要望書や意見などにまとめ、国や自治体、国民の皆さま、企業、他職種などに提出・提案するなど、活発な取り組みを展開しています。以下に、最近の活動を紹介します。
2020年度診療報酬改定に向け要望書提出
~「2020年度社会保障制度(診療報酬)の改定に係る要望書」を提出~
喫緊の課題として生活習慣病の増加、低栄養、フレイル対策等があげられ、健康づくりや疾病の発症予防・重症化予防対策の推進にあたっては、適切な栄養・食事管理は必要不可欠です。さらに、質の高い医療を推進するためには、適切な栄養・食事管理は治療の根幹であることから、「2020年度社会保障制度(診療報酬)の改定に係る要望書」としてまとめ、厚生労働省へ提出しました。
〈要望事項〉
- ①地域包括ケアシステムの実現に向け、入院から在宅医療へシームレスな栄養管理、栄養食事指導体制の実現に向けた評価の充実
- ②新しいニーズへ対応し、安心・安全で納得できる医療体制の構築・充実を図るための入院医療における管理栄養士の活用に対する評価
- ③医療従事者の負担軽減及び働き方改革の推進への評価の充実
- ④効率化、適正化を通じた制度の安定性、持続可能性の向上推進のために、食事療養費に対する適正評価の実現
高齢福祉・介護保険部門にも行政栄養士の配置率100%を目指す
~「行政栄養士の配置促進に関する要望書」を提出~
2025年に向けて、 高齢者に包括的な支援・サービスを提供するための地域包括ケアシステムの構築は市町村の責務とされています。低栄養予防や生活習慣病の重症化予防等の栄養課題への対策を実効性あるものとするために、健康づくり部門のみならず、高齢福祉・介護保険部門に管理栄養士が正規職員として配置されるよう、都道府県栄養士会を中心に、都道府県および市町村に対し要望活動を実施しました。
平成30年度診療報酬・介護報酬同時改定に向け要望書提出
~「平成30年度社会保障制度(診療報酬・介護報酬)の改定に係る要望書」を提出~
医療の機能分化・連携の強化、地域包括ケアシステムの構築の推進等を行うにあたっては、様々な要因のなかで傷病者および高齢者個々人の栄養課題は複雑多岐にわたることからも、重症化予防のために対象者への適切で質の高い栄養食事管理が必要です。また、地域・施設間で共通、継続した栄養食事管理が求められることから、地域、施設で連携した生活支援は重要な課題です。そこで、今日の医療・介護情勢を鑑み、「平成30年度社会保障制度(診療報酬・介護報酬)の改定に係る要望書」としてまとめ、厚生労働省へ提出しました。
〈要望事項〉
【診療報酬要望事項】
- ①回復期リハビリテーション病棟および急性期病棟などで頻繁に介入することにより、栄養状態の改善が見込まれる病棟に対して、管理栄養士が常駐して行う業務に関する評価
- ②入院時食事療養費の社会背景、経済状況等の変化を適切に反映した評価
- ③がん病態栄養専門管理栄養士の適切な活用および配置
【介護報酬要望事項】
- ④実状に応じた栄養ケア・マネジメント専任の管理栄養士の配置の評価
【診療報酬・介護報酬要望事項】
- ⑤管理栄養士による退院時における食事支援に関する評価
行政栄養士の配置率100%を目指す
~「行政栄養士の配置促進に関する要望書」を提出~
これまでの日本栄養士会および都道府県栄養士会の継続した要望活動もあり、全国の市町村配置率が86.8%(平成27年度厚生労働省健康局健康課栄養指導室調べ)と増加しましたが、引き続き、未配置市町村の現状と課題を明確にし、管理栄養士を正規職員として配置していただくよう、都道府県栄養士会を中心に要望活動を実施しました。
行政栄養士の配置率100%を目指す
~行政栄養士の配置促進に関する要望活動を積極展開中~
日本栄養士会および都道府県栄養士会は、これまで行政栄養士(市町村の健康増進に関わる管理栄養士・栄養士)の配置を各自治体に要望してきました。その結果、行政栄養士の数は増加し、今や市町村での全国の配置率は86.4%になっています。 国が推進する「健康日本21(第二次)」において、健康寿命の延伸や健康格差の縮小の実現に向けて行政栄養士の役割が期待されています。そのため、日本栄養士会および都道府県栄養士会は、全国において行政栄養士の配置率100%を目指し、各地域の実情に即した要望活動を展開しています。
病棟への管理栄養士の配置と栄養食事指導に対する評価の充実などを求める
~「平成28年度診療報酬改定」に関する要望書を提出~
国民への安全で質の高い医療を推進するためには、管理栄養士が病棟における栄養管理を担う職種として広く周知されることが大切です。 日本栄養士会は、次の①~⑥を「平成28年度診療報酬改定に関する要望書」としてまとめ、厚生労働省に提出しました。
- ①管理栄養士の病棟常駐によるチーム医療の充実と質の高い栄養管理体制の新設
- ②がんを専門とした管理栄養士がチーム医療の一員として、高度な診療内容を推進することへの評価
- ③生活習慣病予防のための栄養食事指導点数評価の充実および指導回数の要件緩和
- ④入院患者の特別食加算および栄養食事指導の算定対象疾患の拡充
- ⑤病診連携による栄養食事指導の充実を図るための栄養食事指導依頼箋発行料の新設
- ⑥在宅患者訪問栄養食事指導の要件緩和
栄養ケア・ステーションや若い女性たちの栄養相談窓口の充実を訴える
~厚生労働省に「保健医療ビジョン2035」に関する提案・意見を提出~
厚生労働省では、団塊世代が後期高齢者となる2025年から2035年を見据え、「保健医療ビジョン2035」を展開しています。日本栄養士会は、後期高齢者が陥りやすい低栄養・栄養欠乏や生活習慣病の予防において、管理栄養士の個別対応による栄養指導と栄養ケア・ステーションの活動の充実が、今後ますます重要となると考えています。また、健康で丈夫な子どもを育てるための栄養管理支援や、妊娠・出産期にあたる20~30歳代の女性の痩せに対する栄養相談の場の充実も必要です。こうした本会の考えを「保健医療ビジョン2035」に関する提案・意見としてまとめ、厚生労働省へ提出しました。
入院患者の負担が増える給食給付の自己負担増額に反対する
~食事療養費の自己負担の増額に関する意見を公表~
社会保障制度改革国民会議において、入院療養における給食給付の自己負担のあり方について、「入院医療と在宅医療の公平の観点から見直すことを検討すべき」との報告がありました。日本栄養士会はこれに対し、以下の意見を公表しました。
- ①入院療養における給食給付の自己負担を一律に増額することには同意できない。
- ②在宅では管理栄養士・栄養士が身近にいないことから、入院医療と在宅医療における食事(栄養)管理を同等に扱われてはいない。
- ③入院医療と在宅医療の公平の観点からすれば、管理栄養士による在宅療養者の食事(栄養)管理を充実させるべきである。
- ④在宅医療を担う地域の診療所に管理栄養士を配置し、適切な栄養管理指導を推進することが求められる。