政策・制度
日本栄養士会では、全国の管理栄養士・栄養士からのさまざまな声を集約し、要望書や意見などにまとめ、国や自治体、国民の皆さま、企業、他職種などに提出・提案するなど、活発な取り組みを展開しています。以下に、最近の活動を紹介します。
社会保障制度(診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬)の改定に向け、要望書を提出
~社会保障制度(診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬)の改定に係る要望書を提出~
2023年6月16日に「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~」(骨太方針2023)が閣議決定され、第4章 中長期の経済財政運営の2.持続可能な社会保障制度の構築では、健康寿命を延伸し、高齢者の労働参加を拡大するためにも、健康づくり・予防・重症化予防を強化し、リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理の連携・推進を図ることが示されています。
このような、国における基本方針を踏まえ、今日の医療・介護・障害福祉情勢を鑑み、令和6年度社会保障制度(診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬)の改定において、厚生労働省保険局長、老健局長、障害保健福祉部長へ、次の重点事項を柱に要望しました。
重点要望事項
- 1医療施設における栄養管理の更なる推進と管理栄養士業務の適正な評価
- 2包摂的社会の実現に向け、医療・介護・障害施設と地域(在宅)をつなぐシームレスな栄養管理、栄養食事指導体制の構築に向けた評価の充実
- 3安全に安心して暮らすことができる栄養管理体制の構築及び充実を図るための管理栄養士の活用に対する評価
- 4制度の安定性・持続可能性を向上するために、食事療養費に対する適切な対応
「こどもの栄養政策」を担うための組織強化など、令和6年度「こども政策」に関する要望書を提出
~令和6年度「こども政策」に関する要望書を提出~
今般改正された「成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針」(令和5年3月22日閣議決定)において、保健、医療、療育、福祉、教育等の現場において新たに課題となっている事項への対応等のため、各分野における施策の相互連携を図りつつ、その需要に適確に対応していくために、妊産婦、乳幼児期、学童期・思春期等の各段階の保健施策において、望ましい食生活の実現等に向け、栄養指導や普及啓発等を行うとされています。
また、本年4月に、こども・若者がぶつかるさまざまな課題を解決し、大人が中心になって作ってきた社会を「こどもまんなか」社会へと作り変え、子どもの権利を尊重した「こども政策」を横断的な視点で総合的に推進するため新たな司令塔として「こども家庭庁」が創設されました。
今後、こども施策を社会全体で総合的かつ強力に推進していくための包括的な基本法である「こども基本法」(令和5年4月1日施行)に基づき「こども大綱」の策定等、「こども政策」が総合的に推進されるにあたり、内閣府こども家庭庁長官、長官官房総務課長、支援局障害児支援課長へ、次の事項について要望しました。
【重点要望事項】
こども視点で、こどもを取り巻くあらゆる環境を視野に入れ、こどもを誰一人取り残さず、健やかな成長を社会全体で後押しする「こどもの栄養政策」を展開するために、こども家庭庁に栄養系技官を複数配置し、組織強化を図る
【内容】
- 1「こどもの栄養政策」を担うための組織強化
- 2医療的ケア児を含む障害児及びその養育者に対する食生活支援・栄養指導の充実
令和4年度社会保障制度(診療報酬)の改定に向け、要望書を提出
~「令和4年度社会保障制度(診療報酬)の改定に係る要望書」を提出~
我が国においては、高齢化が急速に進展する中で、健康寿命の延伸と人生100年時代を見据えた社会の実現が求められ、国民一人ひとりの健康づくりや疾病の発症予防と重症化予防がますます重要となります。このため、住み慣れた地域で適切な医療や介護を安心して受けられる社会の構築が必須であり、地域包括ケアシステムの一層の推進を図り、地域共生社会の実現を目指していく必要があります。
このような中、喫緊の課題として生活習慣病の増加、低栄養、フレイル対策等があげられ、健康づくりや疾病の発症予防・重症化予防対策の推進にあたっては、適切な栄養・食事管理は必要不可欠であります。さらに、質の高い医療を推進するためには、適切な栄養・食事管理は治療の根幹であることから、社会保障制度(診療報酬)について、厚生労働省保険局長、医療課長へ、次の事項を要望しました。
【要望事項】
- 1.医療施設における栄養管理の更なる推進と管理栄養士業務の適正な評価
- 1.入院基本料等における栄養管理体制の基準の見直し
- 2.特定集中治療室管理料等に係る管理栄養士配置の推進
- 2.地域共生社会実現に向け、入院-介護₋地域(在宅)とシームレスな栄養管理、栄養食事指導体制の実現に向けた評価の充実
- 1.回復期リハビリテーション病棟における管理栄養士の更なる評価
- 2.退院前における訪問指導に関わる管理栄養士の評価
- 3.栄養ケア・ステーションの活用と評価
- 3.安心・安全で納得できる医療体制の構築・充実を図るための管理栄養士の活用に対する評価
- 1.がん領域における専門管理栄養士の活用と評価
- 2.精神科領域に係る管理栄養士の活用と評価
- 4.制度の安定性、持続可能性の向上推進のために、食事療養費に対する適正評価の実現
- 1.食事療養費の適正な評価
- 2.摂食嚥下障害に係る食形態調整等の特別食加算への拡大
令和3年度障害福祉サービス等報酬改定に向け、要望書を提出
~「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定に係る要望書」を提出~
障害者総合支援法の再編により、障害者の地域支援体制が充実強化され、入所及び通所施設は地域の重要な支援拠点となり、栄養・食支援のニーズも高まっています。また、障害がある方は、栄養や食生活について多様な問題を抱えていますが、現代日本の栄養問題である「栄養不良の二重負荷」(肥満とやせ)についても大きな問題となっています。
これらの問題の解決のため、管理栄養士・栄養士が多職種と協働、連携して、適切な栄養ケア・マネジメントを行い、障害者自身が望む生活を送れるよう、引き続き栄養・食生活を通した支援を行うことを目指し、厚生労働省障害保健福祉部長へ以下の事項について要望しました。
【令和3年度障害福祉サービス等報酬改定で要望する事項】
- 1.障害児者の重度化・高齢化を踏まえた地域移行・地域生活の支援における栄養ケアの更なる推進と管理栄養士業務の適正な評価
- (1)福祉型障害児入所施設及び障害者支援施設に栄養ケア・マネジメント専従の管理栄養士を配置した場合の基本報酬額の引き上げを要望(拡充)
- (2)障害者支援施設における経口維持加算の報酬額及び算定要件について、介護報酬と同様にプロセス及び口腔機能を踏まえた経口維持の評価に見直すとともに、介護報酬額並みの上乗せを要望(再編・充実)
- (3)福祉型障害児入所施設において、多職種によるミールラウンド及びカンファレンスによる栄養支援を行った場合の評価として、障害者支援施設と同様の算定要件及び報酬額を要望(新設)
- (4)福祉型障害児入所施設及び障害者支援施設において、入退所時(再入所時を含む)に栄養情報提供書を発行した場合の報酬を要望(新設)
- 2.障害児通所事業所(児童発達支援)及び障害者通所事業所(生活介護)において、管理栄養士が栄養ケア・マネジメントを実施した場合の報酬上の評価
令和3年度介護報酬改定に向け、要望書を提出
~「令和3年度介護報酬改定に係る要望書」を提出~
介護提供体制を推進する介護報酬制度において、国民の誰もが住み慣れた地域で、適切な栄養食事管理のもと毎日美味しく楽しく自分らしい食事ができることを目指し、厚生労働省老健局長へ以下の事項について要望しました。
【地域共生社会の実現に向け、令和3年度介護報酬改定で要望する事項】
- 1.介護保険施設における栄養ケアの更なる推進と管理栄養士業務の適正な評価
- (1)栄養ケアの充実に向け、中・大規模介護保険施設への管理栄養士の複数配置を要望(新設)
- (2)介護保険施設から医療機関への入院時、並びに在宅復帰時における栄養情報提供書発行に対する評価を要望(新設)
- (3)看取り介護・ターミナルケアチームに関与する職種として管理栄養士の明確化を要望(拡大)
- (4)入退所時の相談支援に関与する職種として管理栄養士の明確化を要望(拡大)
- 2.自立支援・重度化防止の推進に向け、管理栄養士の参画によるリハビリテーションの効果的かつ効率的な実施への評価
- (1)介護保険施設の管理栄養士がリハビリテーション等の計画書作成に関与した場合の評価を要望(拡大
- (2)通所介護及び通所リハビリテーション等において、管理栄養士がリハビリテーション等の計画書作成に関与した場合の評価を要望(拡大)
- 3.通所利用・在宅高齢者の栄養改善のための栄養ケア・ステーションの活用通所利用・在宅高齢者の栄養改善に栄養ケア・ステーションの管理栄養士が関わった場合の評価を要望(拡大)
成育基本法に基づく基本方針に関する要望書を提出
~「成育基本法に基づく基本方針に関する要望書」を提出~
2018年12月に成育基本法が制定され、妊娠前の支援から、出産後の児の成長過程における切れ目のない支援を多職種が協働して関われるようになりました。
日本栄養士会では、現代日本の栄養問題である「栄養障害の二重負荷」(「過剰栄養」と「低栄養」が混在する状態)の解決に向けて取り組んでいます。その取組の中で、近年では特に若い女性のやせ、妊産婦の低栄養が指摘されており、若い女性のやせは骨粗しょう症や卵巣機能の低下、低出生体重児を出産するリスクが高くなること、さらに児の将来に生活習慣病のリスクがあることなどが分かっています。
そこで、医療機関や妊産婦教室等を開催する市町村等自治体、保育所、学校などの管理栄養士・栄養士が科学的根拠に基づく栄養情報を提供し、問題意識を啓発していくとともに、妊娠前から健全な食生活を身につけ、実践できるように継続的に支援していくことが重要です。
医療機関や学校、職場、地域、自治体等の管理栄養士・栄養士が多職種と協働して取り組んでいくために、成育基本法の計画策定において、次の事項を厚生労働省子ども家庭局長、母子保健課長へ要望しました。
【要望事項】
成育基本法に基づく計画(成育医療等基本方針)に、妊娠前から出産後の児の成長過程において重要な栄養の指導の充実について
- (1)若い女性のやせ、妊産婦の低栄養等に対する栄養指導の充実
- (2)小児医療における食事・栄養療法の充実
2020年度診療報酬改定に向け要望書提出
~「2020年度社会保障制度(診療報酬)の改定に係る要望書」を提出~
喫緊の課題として生活習慣病の増加、低栄養、フレイル対策等があげられ、健康づくりや疾病の発症予防・重症化予防対策の推進にあたっては、適切な栄養・食事管理は必要不可欠です。さらに、質の高い医療を推進するためには、適切な栄養・食事管理は治療の根幹であることから、「2020年度社会保障制度(診療報酬)の改定に係る要望書」としてまとめ、厚生労働省へ提出しました。
〈要望事項〉
- ①地域包括ケアシステムの実現に向け、入院から在宅医療へシームレスな栄養管理、栄養食事指導体制の実現に向けた評価の充実
- ②新しいニーズへ対応し、安心・安全で納得できる医療体制の構築・充実を図るための入院医療における管理栄養士の活用に対する評価
- ③医療従事者の負担軽減及び働き方改革の推進への評価の充実
- ④効率化、適正化を通じた制度の安定性、持続可能性の向上推進のために、食事療養費に対する適正評価の実現
高齢福祉・介護保険部門にも行政栄養士の配置率100%を目指す
~「行政栄養士の配置促進に関する要望書」を提出~
2025年に向けて、 高齢者に包括的な支援・サービスを提供するための地域包括ケアシステムの構築は市町村の責務とされています。低栄養予防や生活習慣病の重症化予防等の栄養課題への対策を実効性あるものとするために、健康づくり部門のみならず、高齢福祉・介護保険部門に管理栄養士が正規職員として配置されるよう、都道府県栄養士会を中心に、都道府県および市町村に対し要望活動を実施しました。
平成30年度診療報酬・介護報酬同時改定に向け要望書提出
~「平成30年度社会保障制度(診療報酬・介護報酬)の改定に係る要望書」を提出~
医療の機能分化・連携の強化、地域包括ケアシステムの構築の推進等を行うにあたっては、様々な要因のなかで傷病者および高齢者個々人の栄養課題は複雑多岐にわたることからも、重症化予防のために対象者への適切で質の高い栄養食事管理が必要です。また、地域・施設間で共通、継続した栄養食事管理が求められることから、地域、施設で連携した生活支援は重要な課題です。そこで、今日の医療・介護情勢を鑑み、「平成30年度社会保障制度(診療報酬・介護報酬)の改定に係る要望書」としてまとめ、厚生労働省へ提出しました。
〈要望事項〉
【診療報酬要望事項】
- ①回復期リハビリテーション病棟および急性期病棟などで頻繁に介入することにより、栄養状態の改善が見込まれる病棟に対して、管理栄養士が常駐して行う業務に関する評価
- ②入院時食事療養費の社会背景、経済状況等の変化を適切に反映した評価
- ③がん病態栄養専門管理栄養士の適切な活用および配置
【介護報酬要望事項】
- ④実状に応じた栄養ケア・マネジメント専任の管理栄養士の配置の評価
【診療報酬・介護報酬要望事項】
- ⑤管理栄養士による退院時における食事支援に関する評価
行政栄養士の配置率100%を目指す
~「行政栄養士の配置促進に関する要望書」を提出~
これまでの日本栄養士会および都道府県栄養士会の継続した要望活動もあり、全国の市町村配置率が86.8%(平成27年度厚生労働省健康局健康課栄養指導室調べ)と増加しましたが、引き続き、未配置市町村の現状と課題を明確にし、管理栄養士を正規職員として配置していただくよう、都道府県栄養士会を中心に要望活動を実施しました。
行政栄養士の配置率100%を目指す
~行政栄養士の配置促進に関する要望活動を積極展開中~
日本栄養士会および都道府県栄養士会は、これまで行政栄養士(市町村の健康増進に関わる管理栄養士・栄養士)の配置を各自治体に要望してきました。その結果、行政栄養士の数は増加し、今や市町村での全国の配置率は86.4%になっています。 国が推進する「健康日本21(第二次)」において、健康寿命の延伸や健康格差の縮小の実現に向けて行政栄養士の役割が期待されています。そのため、日本栄養士会および都道府県栄養士会は、全国において行政栄養士の配置率100%を目指し、各地域の実情に即した要望活動を展開しています。
病棟への管理栄養士の配置と栄養食事指導に対する評価の充実などを求める
~「平成28年度診療報酬改定」に関する要望書を提出~
国民への安全で質の高い医療を推進するためには、管理栄養士が病棟における栄養管理を担う職種として広く周知されることが大切です。 日本栄養士会は、次の①~⑥を「平成28年度診療報酬改定に関する要望書」としてまとめ、厚生労働省に提出しました。
- ①管理栄養士の病棟常駐によるチーム医療の充実と質の高い栄養管理体制の新設
- ②がんを専門とした管理栄養士がチーム医療の一員として、高度な診療内容を推進することへの評価
- ③生活習慣病予防のための栄養食事指導点数評価の充実および指導回数の要件緩和
- ④入院患者の特別食加算および栄養食事指導の算定対象疾患の拡充
- ⑤病診連携による栄養食事指導の充実を図るための栄養食事指導依頼箋発行料の新設
- ⑥在宅患者訪問栄養食事指導の要件緩和
栄養ケア・ステーションや若い女性たちの栄養相談窓口の充実を訴える
~厚生労働省に「保健医療ビジョン2035」に関する提案・意見を提出~
厚生労働省では、団塊世代が後期高齢者となる2025年から2035年を見据え、「保健医療ビジョン2035」を展開しています。日本栄養士会は、後期高齢者が陥りやすい低栄養・栄養欠乏や生活習慣病の予防において、管理栄養士の個別対応による栄養指導と栄養ケア・ステーションの活動の充実が、今後ますます重要となると考えています。また、健康で丈夫な子どもを育てるための栄養管理支援や、妊娠・出産期にあたる20~30歳代の女性の痩せに対する栄養相談の場の充実も必要です。こうした本会の考えを「保健医療ビジョン2035」に関する提案・意見としてまとめ、厚生労働省へ提出しました。
入院患者の負担が増える給食給付の自己負担増額に反対する
~食事療養費の自己負担の増額に関する意見を公表~
社会保障制度改革国民会議において、入院療養における給食給付の自己負担のあり方について、「入院医療と在宅医療の公平の観点から見直すことを検討すべき」との報告がありました。日本栄養士会はこれに対し、以下の意見を公表しました。
- ①入院療養における給食給付の自己負担を一律に増額することには同意できない。
- ②在宅では管理栄養士・栄養士が身近にいないことから、入院医療と在宅医療における食事(栄養)管理を同等に扱われてはいない。
- ③入院医療と在宅医療の公平の観点からすれば、管理栄養士による在宅療養者の食事(栄養)管理を充実させるべきである。
- ④在宅医療を担う地域の診療所に管理栄養士を配置し、適切な栄養管理指導を推進することが求められる。