管理栄養士・栄養士倫理
管理栄養士・栄養士が
職業人として活動するために
その使命、責務および職能を確認してみましょう
管理栄養士・栄養士が職業人として活動するための拠りどころとなるものが、管理栄養士・栄養士倫理です。管理栄養士・栄養士倫理とはどういうものかを知るために、まず、倫理とは何かについて考えてみましょう。
倫理とは、人として守り行うべき道
辞書には、「倫理」は「人として守り行うべき道、善悪・正邪の判断における普遍的な規準」とあります。法の遵守だけでなく、社会生活において何らかの行為をする場合に、善いことか、正しいことかと判断する根拠ともいえます。
管理栄養士・栄養士として守り行うべき道
では、管理栄養士・栄養士という職業人としての倫理(職業倫理)、つまり、管理栄養士・栄養士として守り行うべき道とは、どのようなものでしょうか。何を目的・目標に、どのように仕事に従事して、その使命や責任を果たしていけばよいのでしょうか、と言い換えることもできます。
管理栄養士・栄養士は、「栄養の指導」を行う専門職です。「栄養の指導」は、人の代謝への介入であり、一種の医学的な侵襲です。それゆえ、管理栄養士・栄養士の職業倫理は、一般の医療倫理で説かれている、「自律、善行原理、無危害原理、正義」から構成される職業倫理を前提とする必要があります。
また、疾病構造の変化や高齢化など、近年の社会状況では、ますます管理栄養士・栄養士業務のニーズが大きくなっています。公共益に貢献する専門職として、国家資格を持つ専門職として、他の職業よりも厳しい「倫理」が求められ、科学的根拠に基づいて業務を遂行することが基本となります。
管理栄養士・栄養士倫理は、なぜ必要なのか
このように、国民の皆さまから信頼される管理栄養士・栄養士であるために、また、自信を持って業務を行うためにも、拠りどころとなる倫理が必要です。日本栄養士会では、社会的要請と職業としての専門性を考え合わせ、つぎのように「管理栄養士・栄養士倫理綱領」を制定しました。
管理栄養士・栄養士倫理綱領
本倫理綱領は、すべての人びとの「自己実現をめざし、健やかによりよく生きる」とのニーズに応え、管理栄養士・栄養士が、「栄養の指導」を実践する専門職としての使命1)と責務2)を自覚し、その職能3)の発揮に努めることを社会に対して明示するものである。
制定 平成14年4月27日/改訂 平成26年6月23日
- 管理栄養士・栄養士は、保健、医療、福祉及び教育等の分野において、専門職として、この職業の尊厳と責任を自覚し、科学的根拠に裏づけられかつ高度な技術をもって行う「栄養の指導」を実践し、公衆衛生の向上に尽くす。
- 管理栄養士・栄養士は、人びとの人権・人格を尊重し、良心と愛情をもって接するとともに、「栄養の指導」についてよく説明し、信頼を得るように努める。また、互いに尊敬し、同僚及び他の関係者とともに協働してすべての人びとのニーズに応える。
- 管理栄養士・栄養士は、その免許によって「栄養の指導」を実践する権限を与えられた者であり、法規範の遵守及び法秩序の形成に努め、常に自らを律し、職能の発揮に努める。また、生涯にわたり高い知識と技術の水準を維持・向上するよう積極的に研鑽し、人格を高める。
管理栄養士・栄養士倫理綱領注釈
1.管理栄養士・栄養士の使命
管理栄養士・栄養士は、日本栄養士会に所属し、すべての人びとの「自己実現をめざし、健やかによりよく生きる」とのニーズに応え、保健、医療、福祉及び教育等の分野において、専門職として、この職業の尊厳と責任を自覚し、科学的根拠に裏づけられ、かつ高度な技術をもって行う「栄養の指導」を実践し、もって、公衆衛生の向上に寄与することを使命としている。
2.管理栄養士・栄養士の責務
管理栄養士・栄養士は、その免許によって「栄養の指導」を実践する権限を与えられた者であり、実践にあたっては、人びとの生きる権利、尊厳を保つ権利、等しく支援を受ける権利などの人権を尊重することが求められる。また、人びとの自己決定権とインフォームド・コンセントを尊重するとともに、科学的根拠に裏づけられた望ましい基準を設定し、持てる限りのより質の高い「栄養の指導」を行い、生命環境の問題について社会に貢献する。社会の期待と信頼に応えるため、自らの心身の健康の保持・増進に努め、常に人格の陶冶及び関係法を遵守する。さらに、生涯にわたり高い知識と技術の水準を維持するよう積極的に研鑽するとともに、先人の業績を顕彰し、後進の育成に努める。職務遂行にあたって、品位と信用を損なう行為、信義にもとる行為をしてはならない。また、職務上知り得た個人情報の保護に努め、守秘義務を遵守しなければならない
3.管理栄養士・栄養士の職能(栄養の指導)
管理栄養士・栄養士の固有の業務は、「栄養の指導」である。「栄養の指導」は、健康の維持・増進、疾病の予防・治療・重症化予防及び介護予防・虚弱支援を実践するための基本となるものであり、個人及び集団を対象とし、栄養の評価・診断・計画に基づいた栄養食事療法・情報提供・食環境整備・食育活動等により、生涯をとおしてその人らしく生を全うできるように支援することである。
(付則)
本綱領の変更は、理事会の承認を得なければならない。