栄養管理の国際基準を学ぶ
これからの栄養管理は国際基準で!
栄養管理プロセスを現場で活用しよう!
栄養管理の国際的な基準として「栄養管理プロセス(栄養ケアプロセス:Nutrition Care Process:NCP)」が誕生しました。これからの管理栄養士・栄養士には必須のスキルです。栄養管理プロセスは、個々の対象者の栄養ケアの標準化だけでなく、栄養ケアを提供するための過程を標準化することを目的としています。日本栄養士会では、生涯教育において栄養管理プロセスの修得を勧めています。
栄養管理プロセスを取り入れると・・・
管理栄養士・栄養士は…
- 栄養管理を行うプロセスが標準化され、論理的に展開できるようになります。
- 用語の標準化(コード化)により、世界の栄養士が共有できます。
- 栄養問題に対する理解が容易になります。
栄養管理プロセスとは
栄養管理プロセスは、栄養管理システムや用語・概念の国際的な統一を目指し、アメリカ栄養士会の提案で始まった栄養管理の手法です。①栄養アセスメント、②栄養診断、③栄養介入、④栄養モニタリングと評価の4段階で構成されています。
栄養診断とは?
栄養管理プロセスにおける、栄養アセスメントと栄養介入の中間の段階で、栄養アセスメントをもとに対象者の栄養状態を診断することです。
栄養診断を行う内容は、栄養介入により
- ①問題を完全に解決できる内容
または、 - ②少なくとも徴候と症状を改善することができる内容
となります。
栄養診断の3つの領域と定義
- ・NI(Nutrition Intake:摂取量)
経口摂取や静脈栄養補給法を通して摂取するエネルギー・栄養素・水・生物活性物質に関する問題 - ・NC(Nutrition Clinical:臨床栄養)
栄養代謝と臨床検査、または身体状況に関する栄養の所見・問題 - ・NB( Nutrition Behavioral/Environmental:行動と生活環境)
知識、態度、信念、物理的環境、食物の入手や食の安全に関する栄養素所見・問題
上記の3つの領域において 70の栄養診断(*1)が認められています。また、栄養診断の記載方法は、「PES報告書」と呼ばれる文章表現を活用し、簡潔な一文で記載します。
PESとは、Problem Related to Etiology as Evidenced by Signs and Symptomsの略で、「Sの根拠に基づき、Eが原因となった(関係した)、Pの栄養状態と栄養診断ができる」ということです。
どうして栄養管理プロセスが考案されたの?
管理栄養士・栄養士は、栄養状態を評価・判定し、栄養管理を行っていますが、今まで栄養状態の判定には、統一された言語や概念、方法がなく、国内のみならず国際的にも混乱が生じていました。栄養と食事のアカデミー(Academy of Nutrition and Dietetics;AND, 元アメリカ栄養士会)はこのような状況を踏まえ、栄養管理に関する言語の定義づけを行い、栄養管理プロセス(栄養ケアプロセス: Nutrition Care Process: NCP)という栄養管理の手順を示しました。
その後、2008年横浜で開催された第15回国際栄養士会議で各国における普及が合意され、日本栄養士会では、第3版を翻訳して「国際標準化のための栄養ケアプロセス用語マニュアル」(*2)を2012年に出版し、さらに日本の現状を考慮してわかりやすく編集した「栄養管理プロセス」(*3)を2018年に出版しています。
- *1「国際標準化のための栄養ケアプロセス用語マニュアル」P.190~
- *2公益社団法人日本栄養士会監訳「国際標準化のための栄養ケアプロセス用語マニュアル」(第一出版,2012)
- *3「栄養管理プロセス」(第一出版,2018)
- ※より詳細な情報は、『ADA(American Dietetic Association)の国際食事・栄養学専門用語(IDNT)参照マニュアル:栄養ケア実践のための標準的なコミュニケーション法、第3版』(The American Dietetic Association’s International Dietetics and Nutrition Terminology (IDNT) Reference Manual : Standardized Language for the Nutrition Care Process, Third Edition)に書かれています。