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【特別対談】日本医師会 横倉会長~人生100年時代到来 地域における管理栄養士・栄養士の役割~

 「人生100年時代」と言われています。住み慣れた地域で、人々が自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステムの構築」が、各地域で推進されています。
 管理栄養士・栄養士は、生活の食支援者として、医療・介護・生活といったすべての場において、地域住民に必要なサービスを構築し、長期的に、継続的に実践していく必要があります。それぞれの地域の実情に応じた質の高い効果的な取り組みを実施するために、管理栄養士・栄養士には医師との連携が欠かせません。
 そこで、第11回「栄養と健康を考える有識者の会」((株)ヤクルト本社協賛)では、(公社)日本医師会・横倉義武会長と、(公社)日本栄養士会・中村丁次会長の対談の場を設け、座長に当会顧問である慶應義塾大学病院臨床研究推進センターの三浦公嗣先生を迎えて、地域における管理栄養士・栄養士の役割について話を進めていただきました。その模様をダイジェストでお届けします。(文中以下、敬称略)

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対談:(公社)日本医師会会長 横倉義武(写真中央)
   (公社)日本栄養士会会長 中村丁次(写真右)
座長:慶應義塾大学病院臨床研究推進センター教授・公益社団法人日本栄養士会顧問 三浦公嗣(写真左)

個別化医療の中で、医師と管理栄養士が
共に作り上げる「個別化栄養」

三浦(以下、座長):2018度より(公社)日本栄養士会にて顧問をしております、慶應義塾大学の三浦です。本日は進行役ということで、日本医師会の横倉会長と、日本栄養士会の中村会長のお二人のお話を進めてまいります。まずは、中村会長から今回の「栄養と健康を考える有識者の会」の趣旨について説明をお願いします。

中村:今日は、貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。横倉会長にはずっとお会いしたくて、お話したいと思っておりました。ご存知のとおり、栄養や食事が、医療・介護の現場のみならず、生活の場においても重要性が高まっており、管理栄養士・栄養士も更に社会に貢献したいと思っています。その場合に、各地の医師会の先生方と一緒になり、管理栄養士・栄養士が地域の人々に健康で幸福な生活をしてもらえるように、日本医師会と日本栄養士会の連携を強化できたらと思い、この場を設けさせていただきました。どうぞよろしくお願いします。

横倉:私が理事長を務めるヨコクラ病院は福岡県みやま市にあり、ずいぶん前から食事療養には力を入れてきました。循環器科の医師たちが高血圧食や脂質異常症食に力を入れています。私自身は管理栄養士・栄養士さんたちとはかなり一緒に仕事をしてきたと思います。よろしくお願いします。

座長:それでは、本題に入っていきます。本日のテーマ「人生100年時代到来を。地域における管理栄養士・栄養士の役割」ですが、人生100年時代を考えますと、高齢化は避けて通れない話であり、高齢化した社会をどうやって支えていくのかという議論が必要です。科学技術が進歩して医学の発展がめざましいなか、栄養についてもコンセプトを新たに考え直す時期にきているのではないかと思います。

横倉:人間の最高齢は120歳よりもさらに伸びるのではないかとも言われていますが、高齢化とともに多くの人々にいくつかの病気が発症します。病気ではなくても、生理的な老化現象、特に女性の場合には筋肉量の低下が顕著で、それをどう予防していくかが課題になってくると思います。まさに、「フレイル対策」として我々が取り組み始めているわけですが、そのファクターの1つとして栄養管理があります。栄養管理には、管理栄養士・栄養士のサポートが必要であり、人生100年時代において非常に重要な職種と認識しています。

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中村:ありがとうございます。私は医療現場での臨床栄養に長年にわたって従事してきたのですが、現在、栄養の問題が複雑化、多様化して、大きな転換期に来ているのではないかと考えています。その背景は生活習慣病患者の高齢化です。かつて、それぞれの疾患に食事療法が特異的に存在し、医師の指示のもとで我々管理栄養士・栄養士が食事の用意や栄養指導をしてきました。しかし、これらの生活習慣病をもった人たちが高齢化すると、病気を複合的に抱えるようになり、食事療法をどこに焦点を当てるべきか分からなくなってきているのではないかと思います。当会では、高齢社会への進展への対応を重要課題の1つに挙げています。人生100年時代に向けて、食事療法の目的は何かを改めて考えてみますと、フレイルを予防してQOLを高め、病気があっても元気な高齢者になってもらうことではないかと思うのです。

横倉:血圧が高くて、糖尿病もあり、脂質異常もある...というような方には、薬に頼らせるばかりでなく、食事と運動でまずは改善を目指すことがベースにあるべきであって、食事で改善という部分は、医師は管理栄養士・栄養士さんと相談してやっていかなければならないと思っています。医師と管理栄養士が一人ひとりに対して作り上げていくことが、今進められている「個別化医療」の中の1つとしての「個別化栄養」。人生100年時代での課題「フレイル対策」については、高齢者に対して良質なたんぱく質をとっていただくことが大切です。どのような食事を食べていただくかを含めて、管理栄養士・栄養士さんの知識と技術が担う部分は大きいと感じますね。

診療所の医師は、管理栄養士のオーダーを
どこに出したらよいのか分からない

座長:横倉会長、大きなビジョンを示していただきまして、ありがとうございます。

横倉:私は管理栄養士さんと病棟回診を一緒にしていましたので、そのような取り組みを全国の医師と管理栄養士にしていただきたいと思っています。在宅医療においても同様です。管理栄養士さんに訪問チームに入っていただいて、共に活動してもらうことが望まれていると思います。

中村:私も個別化医療の中で「個別化栄養管理」をしていかなければならないと考えています。そのためには、管理栄養士は医師と患者のそばにいて、三者で議論をしながら、すすめなければなりません。ですが、残念ながら現在のところ、医師と管理栄養士が出会う場所があるのか、議論をする場所があるのかと聞かれると、自信をもって「ここに、あります」とは言えない状況です。当会の推進する「栄養ケア・ステーション」の取り組みが地域包括ケアシステムに明確に位置付けられていないという課題があります。地域の診療所に医師がいて、患者さんが集まっていても、その場には管理栄養士が存在していない。どうしたらそのような環境を作れるのか、横倉会長にご相談したいところです。

横倉:通常、診療所には管理栄養士を採用していない場合が多いので、栄養指導が必要な患者さんに対しては、どこかに栄養指導をオーダーしなければならない。しかし、実際にはどこにオーダーを出したらいいのかわからない。それが現状ですよね。

中村:まったくそうなのです。

横倉:栄養士会で「栄養ケア・ステーション」をもっと地域に作っていただいて、そこに情報を届ければ管理栄養士さんを送り出してもらえる仕組みを作ってほしいですね。

中村:栄養ケア・ステーションは2018年度から認定制度をスタートし、自治体や企業、大学や病院、医師会、起業した管理栄養士が栄養ケア・ステーションを設置できるようにもなりました。地域の医師会の中に栄養ケア・ステーションの部門を作っていただいて、そこに管理栄養士・栄養士が雇用されたり、登録され、必要に応じて地域の診療所に紹介していくという仕組みができたら良いと考えているのですが、いかがでしょうか。実際に、国内にそのような医師会と管理栄養士の連携ができている場があるのです。

横倉:それはいいですね。

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座長:中村会長が学長をされている神奈川県立保健福祉大学がある横須賀市で、すでに医師会と管理栄養士との連携が進んでいるそうですね。

中村:横須賀市医師会の副会長で在宅医療に非常に熱心な千場純先生が先頭に立って、地域の管理栄養士が数十人登録している「はまゆうの会」という組織があります。医師が患者さんの栄養指導のために管理栄養士が必要と判断したら、はまゆうの会に連絡をすると、管理栄養士が出向いていく仕組みです。それぞれの診療所と管理栄養士が個別に契約をしています。この仕組みはすでに20年以上継続していると聞いています。

横倉:それはいいですね。横須賀市医師会は医師会館の中に救急医療センターも設置されているので、訪問看護ステーションとも連携が緊密なはずです。医師会の中に訪問看護ステーションという下地があると、栄養ケア・ステーションも設置しやすいですね。医師のほうも、外来栄養食事指導料が初回260点(2回目以降200点)と割と高額なことは知っていますから、管理栄養士さんが栄養ケア・ステーションから出向いて診療所に指導に来てくれるなら、ありがたいです。

中村:この仕組みを全国の医師会に普及し、管理栄養士をもっと活用していただきたい思います。

横倉:診療所の外来栄養食事指導においては、管理栄養士は常勤である必要がなくなりましたから、診療報酬改定の時点では全国に随分と呼びかけましたけどね。

中村:ありがとうございます。

座長:すでに管理栄養士と組んでいる医師会もあり、今、横倉会長からご指摘があったように、訪問看護ステーションという基盤がある医師会であれば、そこに栄養ケア・ステーションの併設も具体的に進めやすいと考えてよろしいですよね。

横倉:そうですね。

■栄養ケア・ステーションの取り組みを詳しく見る
■地域包括ケアシステムについて詳しく見る(厚生労働省)

■管理栄養士・栄養士に関わる診療報酬情報を詳しく見る
■管理栄養士・栄養士に関わる介護報酬情報を詳しく見る

医師会と栄養士会、すでに縁はある
あとは、各地でスタートさせるだけ

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座長:地域にいる管理栄養士という人材を活用できるようになれば、診療所で外来栄養食事指導を受けられる方が増えますし、在宅で過ごしている方たちにも医師の指示を受けて訪問してくれる管理栄養士が増えるということになります。医師会の先生方と栄養士会の管理栄養士の活動が一体になれば、管理栄養士にとって地域でのさまざまな活動が可能になるということですね。

横倉:在宅患者訪問栄養食事指導は530点(単一建物診療患者が一人の場合)とこれまた高額です。いま、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅など介護保険外の施設に、多くの高齢者の方が生活しています。そこで暮らす方たちの栄養管理も充実させていかなければなりません。

中村:おっしゃるとおりです。在宅患者訪問栄養食事指導料と、介護保険の居宅療養管理指導料、それぞれ高い指導料をいただいているのですが、どちらも件数がなかなか伸びていないのが実情です。

横倉:だからこそ、管理栄養士さんには頑張っていただきたいですね。

中村:実は、横浜市青葉区医師会では、認定栄養ケア・ステーションとして積極的に取り組んでいます。

横倉:青葉区は医師会も熱心ですからね。

座長:横須賀市や横浜市青葉区のように、地域での管理栄養士の活動が先駆的なところが、点としてぽつぽつと存在するのではなく、面として広がりを見せていくと、地域の中での管理栄養士の仕事が広く理解されるようになり、管理栄養士の実力の発揮が期待されるわけです。

横倉:栄養士会も、医師会のように全国各地域に組織がありますよね。各地の栄養士会会長と医師会会長でそれぞれ会ってもらって、うちの地区ではどのようにやっていこうかと話を進めてもらえれば、いいですよね。

中村:栄養士会会長の立場ですと、その地区の医師会会長さんにお目にかかるというのは、ハードルが高くて大変なことだと聞いています。

横倉:そんなことはありません。実際に、東日本大震災のあとに、被災者健康支援連絡協議会という組織を作りましたが、そこには栄養士会も入って活動してもらいました。

中村:その際は、医師会の先生方が旗を振ってくださって、管理栄養士・栄養士に活躍の場を多く与えていただきました。私も震災後の5月に被災地に行きましたが、「被災地で脚気の症状が起こり始めている」と聞きました。世界中から山のように食べ物が届いているにもかかわらず、次々と倉庫に納められていく一方。そうなると、手早く食べられるものばかりが優先されて、糖質に偏ったものばかりが配られている状況でした。届いた支援物資を分配し、できるだけ栄養バランスがとれた状態で被災者に渡すという専門職が必要で、それを私たち管理栄養士・栄養士が担当することができました。

横倉:そうです、助かりました。避難所においても、栄養指導が非常に大切なのです。どうしても偏った食事になりがちですから。このように、各地ですでに医師と管理栄養士・栄養士のご縁はしっかりできているわけですね。

中村:各医師会の先生方に、ぜひ管理栄養士に栄養食事指導箋を書いていただければと思います。日本栄養士会は全力で管理栄養士の供給体制を作ります。

横倉:ぜひ、お願いします。日本医師会にも在宅に関連した連絡協議会がありますので、そちらで話を進めていきたいと思います。

中村:現状では、管理栄養士の姿が見えない、どこにいるんだとよく言われています。実際に管理栄養士の免許を持っていても、国家資格を活用していない管理栄養士が少なくありません。管理栄養士は毎年1万人も輩出されており、管理栄養士・栄養士で合わせると全国に100万人以上は存在するのですが、実際に働いている管理栄養士・栄養士は12万人と推定しています。これだけ栄養の専門家を生み出している国は諸外国にはなく、栄養士の数で言えば世界最大規模になります。今、資格をスリーピングさせている管理栄養士・栄養士を再教育して、地域の診療所の先生方に活用してもらい、超高齢社会のお役に立ちたいと思っています。

横倉:それはぜひ。人生100年時代ですからね、管理栄養士・栄養士の皆さんにも「一億総活躍」に入っていただかないと。管理栄養士がいなくて困っているという診療所は、山のようにあるのですから。

その人の幸せを作っていくために
全人的な観点で食事・栄養を考える

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座長:冒頭からキーワードとして出ている個別化医療ですが、これは超高齢社会、人生100年時代においては重要な要素となっています。管理栄養士・栄養士の皆さんもこれまでに実績を積んできたと思いますが、これからの社会において、管理栄養士・栄養士はどう活動していくのか。つまり、地域包括ケアの中での役割についてはどうお考えか、中村会長から説明をお願いします。

中村:これからの栄養管理は、個別化医療の中での「個別化栄養管理」が必要だと、私も考えています。やわらかく表現すれば、患者さん、高齢者の方のそばに寄り添って栄養を考え、提供することです。従来のように、集団給食の献立を考える、おいしい料理を作ることにとどまらず、一人ひとりの話を聞いて、健康状態、栄養状態とともに精神状態を把握して、医師と相談をし、その方にとっての最適な栄養と食事を計画、実行し、チームの一員としてケアをしていくことが、地域で貢献できる管理栄養士・栄養士の役割であるととらえています。そして、この一連の業務ができる管理栄養士を我々は今、急いで育てています。

横倉:その管理栄養士・栄養士さんの一連の仕事を、医師側も理解しておかないといけないですね。

座長:医師の側から言いますと、糖尿病の食事、腎不全の食事といった、それぞれの疾病に合わせた食事療法については理解しているのですが、今、中村会長が言われたように、その人の幸せを作っていくための全人的な食事というものは、管理栄養士・栄養士とて考えることが大切だと思います。自分に適した、自分にふさわしい食事を提示してもらえることは、患者さんや高齢者にとって、本当にありがたいことだと思います。

横倉:病院にしても、介護保険施設にしても、食事がおいしいというのは評判になります。診療所にしても、管理栄養士がいるようになれば、「あそこのクリニックは食事の相談もしてもらえるよ」というような評判はすぐに広まるでしょう。マスコミ等の影響で、宣伝されている健康食品に、毎月何万円と使っている方もいらっしゃいます。「病院の診察は高い、お金がかかる」と言いながら(笑)。自分自身も、年齢とともに視力が低下してくると、何かそういった食品に頼りたくなってしまう気持ちは分かりますが、その方たちが健康食品について相談できる場があるというのは、大変重要なことだと思います。

中村:日本国内で栄養学をもっとも勉強しているのは、私たち管理栄養士・栄養士であると自負しています。そうした情報の調整も私たちの役目だと考えています。この人にとって、この健康食品は適当なのか、意味がないのか、害はないのかということを判定してあげることも、管理栄養士・栄養士の役割に入っています。逆に言うと、現在、すべての人に効果のある食事療法というものは、存在しないと思います。その人にとって適した食事療法を考えて、提案していく。その専門職である管理栄養士・栄養士を、患者さんや高齢者のそばに置く必要があると痛感しています。

現場で実践しながら学びを深める
医師も管理栄養士も同じ

座長:健康への意識が高まることは非常にいいことではありますが、その次のアクションへと結びつけるときに、しかるべき専門家の意見が適切に入ってくるという環境をどのように作っていくか、それがカギになりますね。環境を整備すると同時に、専門職の育成も不可欠です。この点は、日本医師会、日本栄養士会それぞれで、どのように進めているのでしょうか。

中村:地域包括ケアの中で、栄養や食事のことを指導していくには"総合力"が必要になってくると考えています。総合力というのは、たとえば栄養素が体内に入って臓器に吸収されて細胞の中で作用するという生理・生化学の基礎知識から臨床を理解しながら、在宅における生活者としての視点を持って経済面や家族構成等も考慮し、栄養状態が改善できる力のことです。私たち管理栄養士・栄養士は、メディカルサイエンスとライフサイエンス、両方を兼ね備えた栄養の指導者にならなければならないと思っています。そうなると養成校での勉強だけでは、なかなか対応できません。

日本栄養士会では、管理栄養士・栄養士としての資質の維持・向上を図ることを目的として生涯教育制度を構築しています。さらに、高度な専門知識・技能を身に付けた管理栄養士・栄養士を育成するために、5種類の特定分野の認定と、5種類の専門分野の認定を関係学会と共同で行っています。在宅の分野では、(一社)日本在宅栄養管理学会とともに「在宅栄養専門管理栄養士」を認定しています。

■日本栄養士会の分野別認定制度について詳しく見る
■在宅栄養専門管理栄養士について詳しく見る

座長:認定制度は毎年続けていかれるわけですから、これから在宅訪問栄養食事指導ができる管理栄養士は増えていき、地域包括ケアにおける栄養管理を担う基盤ができるということですね。日本医師会はいかがでしょうか。

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横倉:日本医師会ではかかりつけ医の臨床プログラム「かかりつけ医機能研修制度」を作りました。医療の基本である患者中心の医療、継続性を重視したチーム医療、多職種連携の実践等を学びます。今まで開業医は自分の専門分野にとどまりがちで、その専門分野の中で一人で色々とこなすことに長けた職種だったのですが、かかりつけ医として自身の医療の幅を広げてもらうことを目的としています。

 我々はかかりつけ医を「なんでも相談できるうえ、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と位置付けています。毎年1万人ほどがこの機能研修を受け、3年が経過しました。開業医は全国に10万人ほどいて、そのうち3万人がかかりつけ医の機能研修を受けたということになります。今後、大きな力になってくると思います。かかりつけ医が、人生100年時代の一番のキーパーソンになりますから。地域住民に寄り添う医療をしていこうと、開業医の先生方に呼びかけています。管理栄養士さんもぜひ、寄り添う栄養を。

■日本医師会「かかりつけ医」について詳しく見る(日本医師会)
■日本医師会「かかりつけ医機能研修制度」について詳しく見る(日本医師会)

中村:寄り添う栄養。いい言葉ですね。

座長:横倉会長のお話に出ました、かかりつけ医機能研修制度においても、栄養は重要な要素として入っていると考えていいでしょうか。

横倉:はい、もちろんです。

座長:栄養というと、栄養素という目には見えないものを連想される人が多いのですが、食事を人生の楽しみのひとつとしてとらえ、高齢になってもどのようにしたら食事を楽しみつつ健康を維持し続けることができるのか。中村会長のお話にあったように総合的な観点から、栄養をとらえるということが大事になってきますね。

横倉:管理栄養士・栄養士さんの仕事は、これから無限に広がるのではないですか。なにせ100万人もおられるのですから。

中村:はい、日本栄養士会での生涯教育にますます力を入れていきたいと思います。

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横倉:仕事をしながら勉強するというのが、一番いいと思います。今、医療関係者はどんどん修業年限が上がっています。医師は6年間だったのが臨床研修をプラスして8年になり、専門研修を受けるとさらに長くなる。看護師さんも従来は3年間だったのが4年になり、大学院修士課程に進学する人も増えてきました。あまりにも修業年限が長すぎて、医療現場に出てくることが遅くなるのというのも、私は問題だと思います。学校では基本的なことをしっかり学び、あとは現場に出てから身につけていく、そういう環境を用意しておけばいいのではないでしょうか。多職種連携についても、医師たちも随分と積極的になってきました。それはやはり、コミュニケーションを実際にとっているからこそ、その重要性が理解できるのでしょう。

座長:在宅医療では、腹の見える関係と、腕の見える関係が大事だと聞いたことがあります。お互いの思いを知り、それぞれの専門技術を認識しあうこと。医師と管理栄養士・栄養士においては、本日の対談で、お互いに期待し、待ち望んでいる関係ということがわかりました。ですから、各地域で、今お話に出た先駆的な事例を参考にしながら、さっそく具体的な取り組みを進めていただければと思います。

中村:そうですね。まずは各地の栄養士会とともに各地での取り組みを広げていきたいと思います。今日は本当にすばらしいお話ができ、ありがとうございました。

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この対談の模様は「日本栄養士会雑誌」第62巻4号で掲載しました。
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