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【特別対談】俳優・平祐奈さん -栄養士を演じてー

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 連続テレビ小説『おむすび』で、主人公・米田結の専門学校のクラスメイト"カスミン"こと湯上佳純を演じた平祐奈さん。専門学校卒業後に病院に勤務、東日本大震災では被災地での支援に出向き、被災者に寄り添った栄養・食生活支援活動を行う姿を熱演されました。平さんが感じた栄養士像、演技に込めた思いとは。日本栄養士会中村丁次代表理事会長との対談の模様をお届けします。

管理栄養士・栄養士に支えられて
生活していることを胸に演技に取り組む

中村丁次[以下、中村] :平さん、今日はご多忙の中、対談の機会をいただきありがとうございます。平さんは朝ドラ『おむすび』で栄養士の湯上佳純役を演じられました。栄養士を演じるのは初めてだったと思いますが、いかがでしたか?
平 祐奈[以下、平]: 私が演じた"カスミン" は病院に勤める栄養士でしたが、演じるにあたって自分との接点を考えてみました。私の身の回りでは、家族や親戚が入院したり、生活習慣病の食事療法をしていたりと、病院の栄養士さんにすごくお世話になっていることをあらためて思いました。病院以外でも学校や食品企業、福祉施設等いろいろなところで活躍されていて、直接お会いしなくても、間接的に支えてもらっている存在だと感じました。
中村:おっしゃるとおり管理栄養士・栄養士は全てのライフステージにおいて健康の維持・増進、疾病の予防と治療の支援に係る仕事で活動場所が幅広いのです。
平:私、管理栄養士をしている友達がいるんです。友達が栄養士養成校に通っているときに、授業や実習が専門的ですごく大変と聞いていたこともあり、責任のあるお仕事なのだろうと深く興味を持っていました。私自身、この役をいただく前から「生きることは食べること」と考えていたので、栄養士役を演じることができてとてもうれしかったです。
中村:ありがとうございます。演じられて印象的なシーンはありましたか?
平:専門学校で授業を受けるシーンは、同世代の出演者と一緒でまさに学校という感じで楽しかったです。カスミンは血が苦手という設定でしたが、私自身も苦手で......。カエルの解剖の教育映像を見るシーンがあるのですが、怖くてなかなか映像を見られずに困りました。ですので、カスミンの怖がる演技は、私のリアルも入っています(笑)。
中村:私は台本の考証を手伝わせてもらいましたが、管理栄養士・栄養士の実情がかなりリアルに描かれていると思いました。栄養学は医学・農学を軸にした広く深い学問です。その一端を伝えていただけてうれしいです。

被災地支援に取り組む管理栄養士・栄養士の
懸命さ、強い気持ちを表現

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中村:私は、カスミンが2011年に発生した東日本大震災被災地の支援に行ったシーンが印象的でした。現地入りした際に私もカスミンと同じ光景を目にしたからです。
平:ドラマでは避難所に大量の支援物資がいろいろな場所に保管されていて、カスミンたち管理栄養士・栄養士が必要なものを探すのに苦労する様子や、炊き出しをして手に入るものを工夫して、栄養を考えた料理を提供したり、食事が進まない被災者に対応したりする様子を演じました。
中村:震災発生から数カ月経った頃から、避難所で脚気を発症する被災者が増えはじめました。脚気はビタミンB1欠乏症で起こる疾病であり、私が被災地で目にしたのは日本中から届いた支援物資の菓子パン、インスタントラーメンの山でした。いずれも貴重な食料ですが、数カ月間と長期にわたる避難生活で糖質を大量に摂り続ければ、糖質の燃焼を助けるためにビタミンB1も大量に消費され、ビタミンB1欠乏症が起こります。このとき、「食料が届くだけではだめだ。管理栄養士・栄養士の介入が必要だ」と強く思いました。
平:私は兵庫県出身です。阪神・淡路大震災発生時は生まれていませんが、当時の話は両親や被災した親戚から聞いて育ったので、大災害での被災者のご苦労は大変なことだと思っていました。
中村:東日本大震災をきっかけに、日本栄養士会は大規模自然災害発生時に被災地での栄養・食生活支援活動を行うために、日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT)を設立しました。JDA-DATは、都道府県栄養士会が養成するJDA-DATスタッフと、日本栄養士会が養成するJDA-DATリーダーで構成され、国や被災地と連携して支援活動を行っています。
平:支援に向かうシーンの撮影前に、避難所で山積みにされた物資や懸命に働く管理栄養士・栄養士の方を映した資料映像を拝見しました。厳しい環境でも、なんとか被害者を支援するために努力する管理栄養士・栄養士の方の強い気持ちを、カスミンを通じて表現したいと思いました。視聴者の皆さまにお届けできていればうれしいです。

コロナ禍をきっかけに、腸内環境の改善を
目指して発酵食品、野菜を手作り

中村:先ほど、「食べることは生きること」と話されていましたが、日頃から食事に気をつけていらっしゃるそうですね。
平:コロナ禍でおうち時間が増えた時期、ずっと続いていた肌荒れを治すために腸内環境を改善しようと、積極的に発酵食品を取ることにしました。みそ汁が大好きなのですが、みそってどうやって作られているんだろうと興味が湧いて調べてみると、家で手作りできることが分かり、大豆をゆでるところから自分で作りました。キムチも手作りしたんです!
中村:腸内環境の改善に着目するところがすばらしいですね。
平:それまでは、野菜もスーパーマーケットで買うのが当たり前と思っていましたが、手作りにハマった勢いで、ベランダでプランター菜園を始めました。植物の世話をして収穫したものを食べるという生活をしていくうちに、自分の食べる物に愛着が湧くようになったんです。普段、ビルに囲まれて生活していると、時々、森や緑や自然が豊かな場所に行きたくなるのですが、プランター菜園で土いじりをすることが癒やしの時間にもなっています。
中村:「食」という字は人を良くすると書きますが、それを体感されているのですね。
平:俳優の仕事は体力勝負なところがあります。仕事で疲れても、食べることで元気になれて「食べることは生きること」だと実感できます。栄養の専門的なことは分かりませんが、栄養士を演じたことをきっかけに、自分なりに取り入れられることを見つけていきたいと思っています。

管理栄養士・栄養士のイメージは"真の華"

中村:カスミンは栄養学校に入学したときから、高い志を持っていましたね。私は彼女の「はい、湯上佳純です!栄養で世界を、人類を救いたいと思ってます!」というセリフに非常に感動したのです。「栄養で世界、人類を救う」という信念は管理栄養士・栄養士は皆持っていることですが、プロの俳優である平さんが発すると、驚くほど心に響きました。
平:本当にうれしいです。ありがとうございます。カスミンはおっとりしたお嬢さまなのですが、代々医師の家柄に生まれたプレッシャーを抱えながら、自分にできることで人を救いたいと自分の意思で栄養士の道を選びました。ゆるふわのカスミンが秘めている芯の強さをセリフに込めました。
中村:管理栄養士・栄養士の業務の1 つに栄養指導がありますが、指導内容を実行してもらえないこともあります。そのときは管理栄養士・栄養士の皆さんには、「自分は相手に響く話し方や表現をできていただろうか」と思い返してもらいたいと思います。平さんの表現力のおかげで、とてもいい勉強になりました。
平:カスミンを演じる中で管理栄養士・栄養士のお仕事をより詳しく知ることができ、管理栄養士・栄養士のお仕事は人の命を預かるとても責任のあるものだと感じました。カスミンもそうですが、管理栄養士・栄養士の方の活躍を知ると、" 真の華" のような職業だと思いました。
中村:管理栄養士・栄養士の仕事は派手ではありませんが、その中に華のイメージを持っていただいたのはうれしいですね。平さんのようなキラキラした俳優さんが演じてくださったことで、「こんな管理栄養士・栄養士になりたい!」と思う若い人が増えてほしいと思います。今日はすばらしい対談をありがとうございました。

<平 祐奈さん プロフィール>
1998年11月12日生まれ、兵庫県出身。映画『奇跡』で女優デビューし、『未成年だけどコドモじゃない』、映画『10 万分の1』など数々の作品で主演。近年では映画『恋は光』や『からかい上手の高木さん』といった話題作に加え、舞台『奇跡の人』に出演。2024年度後期のNHK 連続テレビ小説『おむすび」で朝ドラ初出演。主演映画『ネムルバカ』が3 月20 日に公開。4月より放送予定の関西テレビ・月10ドラマ「あなたを奪ったその日から」に出演。

20250319_3.jpg 日本栄養士会災害支援チームのユニホームを手にした平さん(中央)、中村会長(右)、JDA-DATを総括する下浦専務理事(左)

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