【全国栄養士大会】[スペシャル対談]SDGs時代、栄養と環境について考える!
2022/06/30
7月8日(金)から公開される「全国栄養士大会・オンライン」。そのなかで、前環境大臣の小泉進次郎氏と中村丁次会長の対談が実現しました。
2021年12月に開催された「東京栄養サミット2021」では、SDGsの達成に向けて栄養不良を撲滅することが唱えられるなか、持続可能な食環境を世界規模で構築することが求められています。今回は、現行の環境政策に関わられた小泉進次郎氏と一緒に、「栄養と環境」について考えます。
「課題は、日本の食料自給率の低さと食品ロス」
中村:小泉先生は前環境大臣として、持続可能な未来のために、さまざまな取り組みをされてきていますが、日本人の課題としてもっとも考えなければならないことは何でしょうか。その課題に対して、管理栄養士・栄養士も一緒になって考え、解決策を実践できたらと思っています。
小泉:私が大臣時代から今も変わらず重要視しているのは、日本の食料自給率の低さと食品ロスです。ご存知のとおり、日本の食料自給率は約4割と低く、私たち日本人の食生活は海外からの多くの輸入によって成り立っています。そして、そのような状況にもかかわらず、日本では食品ロスの量も多く、世界で必要とされている食料支援1年分の1.5倍もの量を1年間に捨ててしまっています。
中村:日本は国土が狭くて、食料を生産する能力があまり高くないにもかかわらず、その大切な食料の多くをロスさせているということですね。限られた食料を無駄なく使いながら、なおかつ人々が健康で幸せであるためには、どうしたらよいのでしょうか? 私たち管理栄養士・栄養士のそれぞれの現場に限らず、もっと総合的に考えていかないとなりませんね。
小泉:総合的に考えていくことはもちろん大切なのですが、やはり国民の皆さんには、わかりやすく、実践しやすい解決策を伝えていかなければと思っています。ですから、私はまずは「地産地消を徹底的にやりましょう!」と呼びかけています。
中村:「地産地消を徹底的に!」 ですね。
小泉:そうです。たとえば先日、ある道の駅で現地産の野菜チップスを買いました。私はよく商品の裏面にある食品表示を確認するのですが、原材料表示にいろいろな野菜が明記されている中に、さつまいもだけ「中国産」と書かれていました。地元の採れたて野菜を主に扱っている直売所で、なぜ野菜チップスの中のさつまいもだけが海外からの輸入品なのか、疑問に思いました。遠くの国から食料を運ぶとそれだけ燃料が必要で、環境に負荷をかけています。また、それを捨てることにもエネルギーが必要です。こうした食料やエネルギーの無駄をなくすには、どこから来た食料・食品なのか、誰が作ったものなのか、そういったことを一人ひとりが確認し、しっかりと考えて選択していくことが第一歩だと思っています。
「食のシステムをデザインできる専門職に」
中村:国際的に「サステナビリティ(持続可能性)」が叫ばれていますが、私は、日本人はサステナブルな食文化を持っていると思います。地元で採れる食材を使った伝統的な食生活こそがサステナブルなので、日本人は今後も伝統的な食生活を維持して継続させていくことが、持続可能な食生活をするということになると考えます。
小泉:同感です。世界の人たちから見ても「日本食は健康的だ」というイメージはありますが、日本の食文化の栄養価を主張するだけでは、十分ではない。食料の調達から生産、物流、販売というサプライチェーン全体からみると、日本の食料自給率の低さを考えたら、日本食は必ずしもサステナブルだとは言えません。これからの日本の食の全体像は、中村先生をはじめ、管理栄養士・栄養士の皆さんと一緒になって考えていきたいテーマです。
中村:今、小泉先生がおっしゃったことを、私は先日ある原稿に書いたばかりなので、驚きました。今までの栄養学というのは、ある食材・食品があって、その食べる量や食べ方の研究ばかりで、現場の管理栄養士・栄養士はその指導しか実践してきませんでした。今こそ、管理栄養士・栄養士が生産から流通、加工、消費という食の流れの全体を見て、総合的に、合理的に、科学的に、無駄なく動かせるシステムをデザインできる専門職になりましょうと、呼びかけているのです。
小泉:それはとても頼もしいです。管理栄養士・栄養士の皆さんの活動フィールドが広がっていることは、私もすでに感じています。特に、スポーツの現場での皆さんの貢献に注目しています。政治家自身も、自分たちの日々の政治活動や生活の中で、管理栄養士・栄養士の皆さんとタッグを組んでいったほうが良いと思うほどです。あらゆる食のサプライチェーンの中で、国民一人ひとりがスーパーやコンビニでどんな食品を選ぶのか、消費の場面での選択の旗振り役も、管理栄養士・栄養士の皆さんに率先してやってもらえると、日本の食をより持続可能な方向へと変えていけるのではないでしょうか。
中村:ありがとうございます。この小泉先生とのお話で、管理栄養士・栄養士はとても元気づけられ、勇気が湧いてきたと思います。管理栄養士・栄養士の皆さん、ぜひ小泉先生のリアルな声と私たちへのエールを「全国栄養士大会」でご覧ください。