【PR】【講演レポート #04】"栄養をとる"にこだわった現代人のための「新ジャンルの野菜」活用とは?
2019/08/22
「2019年度全国栄養士大会」講演レポート ♯04
講演名:スポンサード講演「現代人が抱える野菜不足と解決方法」
講師:佐藤秀美氏(日本獣医生命科学大学客員教授)
ビタミン、ミネラルなどの重要な供給源である野菜ですが、若い世代を中心に「健康日本21」で言われる「1日350g以上」の摂取にはなかなか到達できない状態が続いています。いま、管理栄養士・栄養士に求められているのは、ライフスタイルにあった野菜摂取方法の提案ではないでしょうか。主婦の目線を活かした研究を続けている佐藤秀美氏が注目するのは、市販の冷凍野菜や野菜ジュースなどの野菜加工食品です。「生野菜と比べて、栄養価はどうなのか?」、「野菜として扱ってよいのか?」。データをもとに解説していただきました。
野菜は"種類"を考えて、1日350g以上
佐藤氏は、冒頭で「健康日本21」を基に、健康増進と健康寿命の延伸のためには、野菜は350g"以上"が必要だと強調しました。国民健康・栄養調査の結果をみると、とりわけ20~40代の野菜不足が浮き彫りになります。原因として佐藤氏が挙げたのは、朝食の欠食と野菜不足です。しかしながら、佐藤氏の試算からは、朝食を食べ、かつ野菜350gをとったとしても、まだ不足する栄養素があることが明らかになりました。それは、野菜の種類により成分が大きく異なるためです。
佐藤氏は、「日本人が食べている野菜には偏りがあり、栄養バランスが整いにくくなっているのが現状です。つまり、食べる野菜の"種類"を考える必要があります」と指摘しました。不足する栄養素をとるためには、①1日350g以上の野菜、特に緑黄色野菜を積極的にとる、②加えて魚類、豆類、雑穀、カルシウムの供給源となる乳製品や大豆加工品を食べる、③朝食を食べて1日3食とる、ことが必要と力説しました。
コンビニ商品だけでできる「一汁三菜」
上記3つのポイントをふまえたうえで、理想的な食べ方と言えるのは、日本の伝統的な食事構成である「主食+一汁三菜」です。
「管理栄養士・栄養士の皆さんならすぐに献立のイメージができても、一般の方が一汁三菜を見たら『それは面倒。やらない!』と言いたくなりますよね」
そこで佐藤氏が提案したのは、コンビニ商品の活用です。おにぎりや調理済み加工品、缶詰などを使って、和食と洋食の献立案を示しました(写真参照)。
さらに佐藤氏は、「おかずのお皿を並べることも重要ですが、それよりもまずは栄養素を揃えることではないでしょうか?」と投げかけ、一つのスープでも一汁三菜が実現できるアイデアを紹介しました。トマトの缶詰をベースにしたスープで、主菜としてツナ(魚類)、副菜として緑黄色野菜、副々菜として大豆の水煮(豆類)、そこにチーズ(乳製品)を振りかけ、雑穀パンか雑穀ごはんを添えて、完成です。
「コンビニで買って、並べるだけでも栄養素は揃います。その際に、日本人になじみある一汁三菜という食スタイルを意識するだけなので、難しくはないはずです」
野菜の栄養成分を効果的にとるために
出典:青木雄大、菅沼大行 (2016) 日本食育学会誌、10、163-170
続いて、野菜の栄養を効果的にとりいれるコツが紹介されました。キーワードは「栄養吸収率」です。
加熱は、"かさ"が減って量を食べられるようになるだけでなく、細胞が破壊されることによって栄養成分の吸収率がアップします。にんじんを例にみると、ジュースのように細胞が細かくされるほど、β-カロテン溶出率が高くなることがわかっています。また、アクのない野菜は、冷凍することで細胞が細かく破壊されるため、加熱時間の短縮にもなります。
さらに、栄養素別の効果的なとりいれ方として、①「緑黄色野菜」+「油脂」で脂溶性成分の吸収率をアップさせる、②「緑黄色野菜」+「乳製品」/「大豆食品」の組み合わせでカルシウムの吸収率をアップさせる、③「緑黄色野菜」+「低pH食品/肉・魚/ビタミンC」で鉄の吸収率をアップさせる、④「トマト」+「たまねぎ/にんにく」で臭い成分ジアリルスルフィドが脂溶性成分リコピンの吸収を促進させる、などの具体例が示されました。
野菜加工食品は「新ジャンルの野菜」
最後に佐藤氏は、野菜不足の解消策として、市販のカット野菜や冷凍野菜、缶詰やビン詰、ピューレやペースト、野菜ジュースなどの「野菜加工食品」の活用を提唱しました。
栄養価については、市販のカット野菜の場合、もっとも加工調理の影響による損失が大きいビタミンCを基準に比較すると、「生野菜」とほぼ同等と言えます。さらに、生野菜を冷蔵保存すると、2日でビタミンCが60%まで低下するデータを示し、「購入後すぐに食べられる市販のカット野菜のほうが、ビタミンC量を多くとれるのではないか」と説明しました(※文末注)。
出典:大羽和子、1990、日本家政学会誌、41、715-721
市販の冷凍野菜の栄養について、佐藤氏は「家庭でゆでた生野菜と遜色ないと言えます。市販の冷凍野菜は、旬の野菜を畑の近くで洗浄して冷凍するので、栄養価としてはかなりいいと考えています」と評価。むしろ、「冷凍で細胞が破壊されていることを鑑みると、栄養成分の吸収率は、冷蔵保存後に家庭でゆでた生野菜より、市販の冷凍野菜が勝ると考えられます」と結論づけました。
出典:山口智子ほか、1998、日本家政学会誌、49、1241-1247
では、野菜ジュースは、野菜と言えるのでしょうか?
国民健康・栄養調査では、食品群別栄養素等摂取量の分類「野菜」の中で、「野菜ジュース」は「緑黄色野菜」や「その他の野菜」と同格の"項目"になっています(野菜ジュース飲料重量=野菜摂取量)。
また、佐藤氏の試算からは、野菜ジュースの成分量は、種類によって原料の野菜とは大きく異なることが明らかになりました。このことから、「『生野菜』も『野菜ジュース』も種類によって成分量は異なり、ビタミン/ミネラルの供給源としては両方とも価値があります。厚生労働省が一つの"項目"として挙げている『野菜ジュース』は、『新ジャンルの野菜』と考えてもいいのではないでしょうか」と投げかけました。
さらに、1食分の生トマトとトマト加工品(ホール缶、トマトピューレ、トマトケチャップ)の成分比較から明らかになったのは、同じ野菜が原料であっても加工品によって成分量が異なることです。
このことから佐藤氏は、「野菜加工食品を利用することで、ビタミン、ミネラルの供給源になります」と述べ、野菜加工食品をとりいれるメリットを強調しました。そして、「健康の維持・増進のためには、『手作り』にこだわる前に『栄養をとる』にこだわることが重要です。『新ジャンルの野菜』などを活用して、野菜の種類を増やして栄養素を効果的にとりましょう」とまとめました。
実際の栄養相談、栄養教室などでどのように活かせるかを、講演を聞いた管理栄養士・栄養士に取材してみたところ、「加工品をとり入れて、手作りと融合させることで、各家庭での献立のバリエーションも増やせると思う。料理の手順が減ることで、家族の時間を生み出せるのもメリットで、勧めやすいと思った」(行政勤務・女性)、「最近は、30~40代の若い世代も生活習慣病のために栄養指導に来るのですが、食費を抑えたいがために食材が偏りがちな方が多く、まずは野菜ジュースをとりいれることを勧めたところでした。野菜ジュースを野菜の一つと考える根拠が得られてよかったです」(病院勤務・女性)、「栄養のバランスを考慮して野菜の食材をすべて使い切ることはなかなか難しい。新ジャンルの野菜というアイデアは、離れて暮らす家族にも伝えていきたいと思う」(保育所勤務・女性)、「世代別にアプローチの仕方を変える必要があることがわかった。20代にはまず朝食、60代には野菜ジュースをプラスすることを勧めたい」(保健所勤務・男性)など、講演内容を応用した栄養教育が広がりそうです。
(※注)出典:畑江敬子ほか、1990、日本家政学会誌、41、1143-1149
講師プロフィール:佐藤秀美氏(日本獣医生命科学大学客員教授 学術博士・栄養士)
横浜国立大学卒業後、企業で調理機器の研究開発に従事。その後、お茶の水女子大学大学院修士・博士課程を修了。学術博士。専門は食物学。放送大学をはじめ、複数の大学で教鞭をとる傍ら、専門学校を卒業し栄養士免許を取得。現在は、日本獣医生命科学大学客員教授を務める。『カラダと健康の疑問に応える栄養「こつ」の科学』(柴田書店)、『おいしい料理が科学でわかる日本型健康食のすすめ』(講談社)等、著書多数。研究者と主婦の目線で研究を続け、料理・健康・栄養の実践ポイントをエビデンスに基づいて、分かりやすく生活者に伝えている。
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