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【令和4年度診療報酬改定】厚労省担当技官がポイントを解説! 医療現場、こう変わる

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 2022年3月5日、第41回食事療法学会がオンラインで開催されました((公社)日本栄養士会主催)。2名の管理栄養士による先駆的な取り組みの講演に続き、前日の4日に告示・通知が発出されたばかりの「令和4年度診療報酬改定」の概要について、厚生労働省保険局医療課課長補佐の増田利隆氏から情報提供がありました。ここでは、その中から医療に携わる管理栄養士・栄養士に欠かせない診療報酬改定のポイントをまとめて紹介します。

 診療報酬は、厚生労働省の審議会の1つである社会保障審議会で診療報酬改定についての基本方針を決め(下図参照)、中医協(中央社会保険医療協議会)で具体的な改定内容の議論を経て、2年ごとに改定されます。

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 今回の改定では、診療報酬全体でプラス0.43%の改定率となりました。今改定の基本認識の1番目には、「新興感染症等にも対応できる医療提供体制の構築など医療を取り巻く課題への対応」があり、改定の基本的視点と具体的方向性にも【重点課題】として新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築が挙げられたのが、時勢をとらえた点と言えます。
 また、同じく【重点課題】として、安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進が掲げられており、各職種がそれぞれの専門性を十分に発揮することや、チーム医療の推進等が求められ、管理栄養士の専門性も期待されるような具体的な改定項目が見受けられます。以下、確認していきましょう。

特定機能病院で管理栄養士の病棟配置を評価

 下の図は中医協に提出された資料の一部です。医療機関に勤務する管理栄養士の業務の割合の経緯を示しており、【現状】では【過去】に比べて入院患者の栄養管理の比重が大きくなっていることがわかります。

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 右の【望ましい姿】にあるように、入院患者の栄養管理をさらに充実させ、医療安全の強化、医師・看護師の負担を軽減するため「病棟配置型」の管理栄養士が望ましいと議論されました。
 そこで新設されたのが、特定機能病院での「入院栄養管理体制加算270点(入院初日および退院時で1入院で2回算定できる)」です。増田氏はこの加算が新設された背景として、「特定機能病院で患者80人に対して管理栄養士1人を配置している病院よりも、患者40人に対して管理栄養士1人を配置している病院の方が、在院日数が短縮したという報告等があった」と述べ、こうした数々のデータが中医協で示された結果によるものだと説明しました。
 この入院栄養管理体制加算は特定機能病院入院基本料を算定している患者が対象であり、この施設基準には「当該病棟において、専従の常勤の管理栄養士が1名以上配置されていること」と明記されており、管理栄養士の病棟配置を評価するものです。病棟に配置された管理栄養士は、入院前の情報収集、入退院支援部門との連携から、入院後は栄養スクリーニングをはじめとする栄養管理全般を一手に引き受け、医師、看護師等と連携して栄養管理を行っていくことが必要です。
 この加算を算定する場合、入院栄養食事指導料や栄養サポートチーム加算は算定できませんが、退院後の栄養食事管理に関する事項や入院中の栄養管理の情報を他施設に共有する場合に評価される栄養情報提供加算(50点)が退院時1回に限り追加で算定できます。

周術期の栄養管理に新設の加算

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 今回の改定では、周術期における適切な栄養管理を推進するために「周術期栄養管理実施加算270点(1手術に1回)」も新設されました。これについて増田氏は、術前から栄養不良の患者が一定程度存在すること、術後の経口摂取再開までの日数が短いと在院日数が有意に短いことなど、数々のエビデンスを示しました。
 この加算を算定するための施設基準は、総合入院体制加算または急性期充実体制加算に係る届出を行っている保険医療機関で、周術期の栄養管理を行うにつき十分な経験を有する専任の常勤管理栄養士が配置されていること、とされています。専任の管理栄養士は、医師と連携し、日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)の静脈経腸栄養ガイドラインやESPENのガイドラインを参考にしながら栄養管理を実施していきます。
 「全身麻酔を実施した患者」が算定対象となるため、整形外科等を含め、比較的元気な患者であっても手術による一時的な落ち込みからの早期の回復を目指すため、算定の対象となっています。

外来栄養食事指導の専門性が評価される

 さらに、外来の栄養食事指導料は2点の見直しがありました。
 1つめは、算定要件に注3が加わり、「外来化学療法を実施している悪性腫瘍の患者に対し(中略)専門的な知識を有する管理栄養士が具体的な献立等によって指導を行った場合に限り、月1回に限り260点を算定する」というものです。専門的な知識を有する管理栄養士については、〔施設基準〕に明記されており、悪性腫瘍の栄養管理に関する研修を修了し、かつ、栄養管理(悪性腫瘍患者に対するものを含む。)に係る3年以上の経験を有する専任の常勤管理栄養士とされています。この研修は医療関係団体等が実施する300時間以上の研修を指し、いずれの研修が該当するかは、このあと発出される疑義解釈で詳細が示される予定です。

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 この見直しのポイントは、通常の栄養食事指導では初回概ね30分以上、2回目以降概ね20分以上という時間の設定がありますが、そのような一律の基準はありません。また令和2年度診療報酬改定において新設された注2にある月2回の指導という要件もありません。化学療法の副作用には様々な症状があり、それぞれに応じた栄養食事指導が求められており、また、化学療法のスケジュールによっては月2回の要件では算定できないケースも多々生じており、専門的な知識を有する管理栄養士ががん化学療法を行っている患者さんの状態等に応じた支援につながるよう、このような見直しとなりました。
 外来栄養食事指導に関する2つめの見直しは、「情報通信機器を用いた場合」についてで、令和2年度の改定で設定された際には外来栄養食事指導料1の2回目以降のみでしたが、外来栄養食事指導料1の初回と、外来栄養食事指導料2にも拡充されました。そのため、診療所において、他の医療機関や栄養ケア・ステーションの管理栄養士が情報通信機器を用いて栄養食事指導を実施した場合にも算定できるようになりました。点数は、前回の改定に準じたものとなっています。

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治療室、障害者病棟、入退院支援でも栄養管理を評価

 前回(令和2年度)改定で新設された「早期栄養介入管理加算」も見直しが行われました。これは〔算定要件〕が変更となり、特定集中治療室の入室から7日を限度として、入室後早期から必要な栄養管理を行った場合に250点、経腸栄養を48時間以内に開始した場合は400点となり、現状の臨床現場での課題を見直すことにつなげるべく、2段階の設定になりました。また、特定集中治療室管理料1〜4に限らず、救命救急入院料1〜4、ハイケアユニット入院医療管理料1、2、脳卒中ケアユニット入院医療管理料、小児特定集中治療室管理料の対象となる治療室も含まれることになりました。
 さらにまた、栄養サポートチーム加算では、障害者施設等の入院基本料を算定している病棟においても本加算が算定できるようになり、算定対象が拡大されました。
 他にも、入退院支援加算の見直しでは、算定要件の対象となる要因に「サ 入院治療を行っても長期的な低栄養状態になることが見込まれること」が加えられ、入退院支援加算の1および2でこうした患者にも対応を要することが明確化されました。このように、管理栄養士および栄養管理の対象範囲が広がってきていることがうかがえます。

摂食嚥下支援加算は名称変更

 摂食嚥下支援加算は、摂食嚥下機能回復体制加算に名称が変更され、1〜3に区別されることになりました。施設基準によって1〜3に分けられ、1と2は摂食機能療法の算定が可能な医療機関で、医師または歯科医師、専従の言語聴覚士または適切な研修を修了した看護師、管理栄養士が参加するチームの設置が必須です。3は専任の医師と看護師または言語聴覚士のみで算定できます。
 加算1を算定するには、鼻腔栄養や胃ろう、中心静脈栄養の患者の経口摂取の回復率が35%を超えていること必須です。
 回復率の計算とそれに基づく届出はやや複雑ではありますが、計算式や取り扱い方は通知に明記されているので各自でしっかりと確認し、把握しておきましょう。

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他職種にも求められる管理栄養士との連携

 そのほかにも、いくつかの項目で"管理栄養士との連携"が明確化されています。
 入院基本料および特定入院料の〔施設基準〕の4 褥瘡対策の基準では、褥瘡対策の実施内容が明確化され、管理栄養士と連携することや、褥瘡対策に関する診療計画書の栄養管理に関する事項は栄養管理計画書で対応できることが明記されています。
 また、特定機能病院での回復期リハビリテーション病棟入院料は令和4年3月31日で廃止の予定でしたが、現に届出がなされている病院において一定程度の役割を果たしていることから「特定機能病院リハビリテーション病棟入院料2,129点」として新たに位置付けられることになりました。この施設基準には、専従の常勤の管理栄養士が1名以上配置することが設けられています。
 外来医療においては、地域包括診療料・地域包括診療加算が見直され、慢性疾患を有する患者に対する生活面の指導については、医師の指示を受けた看護師、管理栄養士等が行っても差し支えないことになりました。
 上記の情報を提供したうえで、増田氏は「今回の改定の効果を把握し、検証するためには、現場の管理栄養士の皆さんに実践していただかなければならないため、積極的な取り組みをお願いしたい。また、次回の令和6年度改定は診療報酬・介護報酬の同時改定となるため、国の政策としてどのような改定が求められるのか現場の皆さんからの声を挙げていただきたい」と述べました。
 増田氏の情報提供を受けて、(公社)日本栄養士会医療事業推進委員会の原純也委員長は、「管理栄養士の評価が広まっていると受け止めています。この改定で管理栄養士が確実にやるべきことがより明確化されました。それぞれの管理栄養士が率先して取り組み、管理栄養士が患者さんのQOLの向上に貢献しているという実態を作っていきましょう」と、オンラインでの受講者に呼びかけました。

 今回の令和4年度診療報酬改定の情報については、4月28日から開催する「令和4年度診療報酬改定(栄養関連項目)説明会・オンライン」等で学ぶことができます。ぜひ、お申し込みください。

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