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保育園における管理栄養士の意義と乳幼児期の食事の重要性を広めたい

トップランナーたちの仕事の中身#113

道祖友美さん(社会福祉法人微妙福祉会みみょう保育園、管理栄養士)

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 保育の現場において、管理栄養士としての専門知識を生かした保護者への支援、グループ内職員へのレクチャーを含めた多職種連携に注力する道祖友美さん。管理栄養士だからこそ可能な乳幼児期の成長支援について伺いました。

法人内グループ園の献立作成を担う

 道祖友美さんは管理栄養士養成校を卒業後、こどもと関わることが好きという理由から、広島県内で複数の保育園(以下、グループ園)を運営する社会福祉法人微妙福祉会に就職しました。現在はグループ園の1 つであるみみょう保育園に在籍しながら、9つのグループ園の給食部門の統括業務を行っています。
 「全グループ園の昼食、夕食、おやつ、離乳食の献立を作成し、各園の行事日程に合わせて献立の調整を行っています。毎日午前中は、在籍する施設で、園児食は約400食、職員食を含めると食数が多いため、毎日時間との戦いです。調理スタッフの負担を抑えるためにも献立作成時から材料選び、工程、時間配分等を配慮した効率の良い調理を心掛けています」

乳幼児期は食の自立を形成する第一歩

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 道祖さんは入社2年目から、地域の未就園児と保護者を対象にして不定期で開催する園開放の際に、希望する保護者に栄養相談を行っています。
 「当グループは創立時から子育て支援に力を入れてきましたが、栄養相談は実施していませんでした。そうした中、当時、私が在籍していた保育園で栄養相談を行うことになり、担当となりました。まだ経験が浅く自分にできるか不安な気持ちを園長に伝えると、返ってきたのは『管理栄養士なのだからできるでしょう』という言葉でした。その言葉にハッとし、管理栄養士が在籍する意義を保護者ならびにグループ園のスタッフに知ってもらう機会にしなければと取り組みました」
 以来、道祖さんは栄養相談に訪れる保護者に向けて、乳幼児期の食事の重要性を積極的に伝えています。

 「保護者の多くが悩むのは離乳食です。育児書の月例スケジュール通りに進めているのに食べてくれないと不安に思ったり、最近はインターネットやSNSを頼りにし、エビデンスのない情報に不安を募らせたりするケースも少なくありません」
 あるときの栄養相談では、育児書にある食事量よりも食べる量が少ないことを心配した保護者が訪れました。
 「なかなか食べないことや身体が小さいことを心配して保護者の表情は暗く、声色から心配が伝わってきました。そこで、育児書は目安であり、発達は個人差があること、離乳食の主な目的は栄養補給ではなく、自分で安全に食べることのできる『食の自立』を培うのが目的だと説明すると安心したようでした。その後も栄養相談に来てくれるようになり、具体的な離乳食の工夫をお話しすると『家に帰ってチャレンジしたら食べました!』、『食べる量が増えてきました!』と、保護者の表情がどんどん明るくなっていったのが印象的でした」

多職種に向けて専門知識をレクチャー

 園児の食事に関する困りごとは、保護者に限ったことではありません。園解放のたびにこうした栄養相談の様子を見ていた保育士たちから、乳幼児の正しい食事介助の仕方を教えてほしいという声が上がりました。
 「全国的に乳幼児の誤嚥による窒息事故は後を絶ちません。グループ園の保育士は細心の注意を払って対応していますが、食の専門家である管理栄養士から今一度、正しい知識を得たいといってもらえたことは管理栄養士としてとてもうれしいことであり、保育の現場で不可欠な多職種連携を深める契機にもなったと思います」
 道祖さんはインターネットやSNS等で、食材を小さく切れば誤嚥が防げて安全という情報発信が増えていることを危惧しています。
 「離乳期は、乳幼児が食べ物を手で持ち、乳幼児自身が食べ物を目で確認してから前歯でかじり取る。それをもぐもぐ噛んで細かくし、ごっくんと飲み込むという、咀嚼嚥下の仕方を身に付ける大事な時期です。離乳期から小さく切った食べ物ばかりで育つと、一口の適正量が分からないために口いっぱい頬張ってしまい、噛むことも飲み込むこともできずに窒息してしまう要因になります。
 大事なのは小さく切ることではなく、食材のかたさです。野菜は大きめの一口大に切って柔らかく加熱し、つぶしながら食べさせること、一口量や食べるペースは個人差があることをお伝えしています。また、離乳食は月齢に合わせて進めるのではなく、その子の口や舌の動かし方、手指の発達等の発育・発達を確認して進めるようにお話ししています。こうした内容は給食の調理方法にも関わるので、調理スタッフにも同様の研修を行っています」

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 全グループ園の管理栄養士、給食職員で行う給食会議では、道祖さんの発案により保育士、保育補助者も参加できるようにし、給食職員が抱える課題や取組、園児の食事に関わる困りごとを共有できるようにしています。また、グループ園から要望があれば、その都度、希望に沿った内容の研修を不定期で実施し、保育職員の新規採用研修で離乳期の食事をテーマに研修を担当しています。2025年には園外の活動として、広島市立保育園会・広島県保育連盟連合会主催の研修でも講師を務めました。
 近年、対応が必要な園児が増えているのが食物アレルギーと、ハラル等の宗教的な飲食規定です。
 「複数の食物アレルギーを持つ園児の場合は、保育士による聞き取りから、対応可能な範囲を提案します。調理スタッフは多少負担が増えてもがんばって対応しようとしますが、調理スタッフの人数は限られています。安全の確保を第一に考え、管理栄養士の立場でできないことはできないと判断し、対応策を練って園長に提出し、最終的には園長が決定して保護者にお伝えしています」

 こうした業務の支えとなっているのが2024 年に取得した食物アレルギー分野管理栄養士と小児栄養分野管理栄養士の資格です。資格取得後はフォローアップ研修を受けてスキルアップを続け、その成果は保育園における食支援、管理栄養士の意義を伝える活動として着実に広がっています。

「自分で調べる、考える」を促す後輩への指導

 グループ園では2025年に管理栄養士2名を採用し、現在、道祖さんが後輩への指導を行っています。現場ならではの食材発注、大量調理といった給食業務のノウハウ、保護者への対応の仕方等、いずれも一方的に教えるのではなく、提起した問題を本人たちが調べて考える習慣が付くように工夫しているといいます。
 特に保護者への言葉掛けは、抱え込んでいる困りごとを聞き出すきっかけにもなること、保護者からの相談には専門用語を使わず、誰にでも分かる簡単な言葉で返し、その場で答えられないことがあったら、そのままにせず、答えを調べて必ず返事をすること、これらの積み重ねが管理栄養士への信頼感を生み、より良い栄養相談につながっていくことを伝えています。

 「乳幼児期は食の自立を形成し、食べる楽しさを知る重要な時期です。楽しく食べることは意外に難しく、安全安心な環境づくり、食べさせる人たちの雰囲気の良さ、こどもの心の安定がそろってこそ、食べたくなる意欲が湧いてきます。このことを嚥下咀嚼の発達の仕方とともに、管理栄養士、グループ園の多職種スタッフ、保護者が共有し、連携してこどもの成長を支えていければと思います。近頃は、発達に課題のあるこどもの入園が増えているので、これまで同様、ミールラウンドをして園児の食べ方を観察することを続け、保育現場でできること、できないことを見極めて少しでも楽しい食環境の提供を目指しています。そのためにも今後は、こどもの身体と心の発達についてより学びを深めていきたいと考えています」

プロフィール:
2006年広島女学院大学生活学部生活科学科食物栄養専攻卒業。同年に社会福祉法人微妙福祉会に入職。くまの・みらい保育園、段原みみょう保育園、第二みみょう保育園での勤務を経て現職。2024年からみみょう保育園に在籍しながら、グループ園の給食部門の統括業務を担う。広島県栄養士会所属。

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