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多様な支援ニーズを持つこどもへの食事支援のため、多職種連携の構築を目指す

トップランナーたちの仕事の中身#120

島田まゆみさん(社会福祉法人長野市社会事業協会 児童発達支援センターにじいろキッズらいふ、管理栄養士)

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 長年にわたり、発達支援の現場で食事支援に尽力する管理栄養士の島田まゆみさん。未経験の分野であった業務の壁を、絶え間ない学びと実践、多職種との連携を重視した姿勢で突破していく取組について伺いました。

ゼロから取り組んだ、 児童発達支援センターの立ち上げ

 管理栄養士の島田まゆみさんは、社会福祉法人長野市社会事業協会 児童発達支援センターにじいろキッズらいふ(以下、にじいろキッズらいふ)で特別な配慮が必要なこどもへの食事支援に取り組んでいます。

 中学・高校時代に陸上部に所属し、自身やチームメートの体調管理、けがのケアのために栄養と食事に興味を持ったのが管理栄養士・栄養士を目指したきっかけでした。栄養士養成校で栄養士資格を取得後、管理栄養士を目指して病院、保育所に勤務、いずれも乳幼児期の栄養と食事を担当し、実務経験を積みました。2013年に管理栄養士資格を取得すると、同年、にじいろキッズらいふの開所に伴う管理栄養士の募集を知りました。こども一人ひとりへのきめ細かい支援に携わりたいという思いを抱いていた島田さんは、にじいろキッズらいふは乳幼児定員が30人と少人数であったことが決め手となり、転職を決めました。
 「管理栄養士は私一人で、開所の準備にあたって給食管理業務、食支援体制の構築から担当し、初めてのことばかりでした。前職の経験は生かせましたが、医療的ケアや発達等の特別な配慮が必要なこどもへの対応は未経験で、小児の摂食嚥下障害に関する知識も十分とはいえませんでした」

 島田さんは開所の準備に試行錯誤する中、食支援について施設内研修に加え、独学を続けました。こうした島田さんの様子を見ていたにじいろキッズらいふの施設長は、長野県内の他の児童発達支援センター運営者に連絡し、島田さんを施設見学に連れて行ってくれました。
 「見学できたことで現場のあり方が具体的にイメージできました。見学先の管理栄養士に給食設備や食支援の取組方等を質問でき、貴重な学びとなり感謝しかありません」と振り返ります。

学びと仲間を得た自己学習会

 独学だけでなく学びの場を求めていた島田さんは、長野県栄養士会福祉事業部の先輩役員に相談しました。そして紹介されたのが、神奈川県立保健福祉大学名誉教授の杉山みち子先生と当時済生会横浜市東部病院の管理栄養士の藤谷朝実先生、障害児者支援施設のメンバーたちで定期的に開催していた特別な支援を必要とするこどもの勉強会(以下、勉強会)でした。

 勉強会では栄養ケア·マネジメントで目指すもの、障害特性や疾患、偏食の捉え方、咀嚼·嚥下の困りごとや保護者への対応、保健福祉施策等、現場で必要とされる知識を学んだ。また1人ずつ事例を持ち寄り、症例について考えをまとめ、発表しあうことで管理栄養士としての土台をつくっていくことができたとのこと。
 同会の活動・研究の成果は、『子どもの「食べる楽しみ」を支援する―特別な配慮を必要とする子どもの栄養ケア・マネジメントのために―』(建帛社)という書籍にまとめられ、今も島田さんの業務を支える1冊となっている。

学会発表をきっかけに大学院へ進学

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勉強会への参加をきっかけに、2018年に島田さんは長野県栄養改善学会で、にじいろキッズらいふでの食事支援の事例発表を行い、学会賞に選出されました。聴講していた養成校の恩師から、今後も支援が必要なこどもへの栄養ケアに取り組み、支援の必要性を発信するための土台づくりとして、大学院への進学をすすめられました。
 「勤めながら2019年に松本大学大学院修士課程に進学し、児童発達支援センターに通う障害のあるこどもの家族支援(主に保護者支援)について研究しました。このテーマを選んだのは、現場で保護者と接する中で保護者へのフォローの必要性を感じていたことが大きいです。管理栄養士の存在と栄養と食の専門職だからこそ寄り添える支援につなげたいと考えました」

 勉強会、大学院での研究で得た、「特別な配慮が必要なこどもにとっての食べる楽しみの充実」という新たな視点を、業務にも取り入れています。
 「にじいろキッズらいふでは、できないことをできるようにする機能習得を目指すのではなく、こどもの生活全般を支える包括的な支援がベースとなっています。食事支援においても、背景を丁寧にみて、こどもの『好き』を最大限活用することを大切にしています。こうした食事支援が実施できているのは経営陣をはじめ、にじいろキッズらいふのチーム支援・連携があってのことです」

多職種との連携

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 にじいろキッズらいふには管理栄養士の他、保育士、児童指導員、看護師、作業療法士が常勤し、非常勤として理学療法士が連携して支援を行っています。摂食機能に課題のあるこどもは、さまざまな要因で栄養不良等が起きやすく、食べることで疲れず完食できるよう食形態の検討も重要となります。島田さんは、毎日、昼食とおやつの時間に全クラスを回り、食事介助をしている保育士、看護師にこどもの様子を聞き、食事ごとの目標を多職種で共有して食事支援を続けています。
 さらに、1年に2回、全多職種スタッフが集まって意見・情報を共有する会議と毎月行う全体会議の他、児童発達支援現場との会議では、管理栄養士として食支援を提案しています。こどもの強みと心揺さぶられるあそびから支援を行っていくために施設では独自のアセスメントシートを用いており、管理栄養士は日頃の食の情報、成長曲線を用いて栄養評価を行います。低出生体重児等、成長障害や栄養障害があるこどもには、かかりつけ医やリハビリテーション機関からの情報収集も欠かせません。

 「にじいろキッズらいふは福祉型施設なので医学的検査ができません。医学的な情報が必要な場合は、保護者の同意を得て、看護師がかかりつけ医への確認や診察に同行することもあり、可能な範囲で情報共有に努めています。日常の食事提供の中で、『今日○○を食べられたよ!』、『今度はこんな風にしていきたいな』と、その場で食形態や食事介助の方法等の確認をし、食事支援に反映させることで支援者たちとこどもの食事面も話題にしあえる関係性を築いてきました」

 島田さんは、摂食嚥下の発達に合わせた食事が提供できるのは、調理員たちのきめ細かい仕事があってこそと考えています。
 「こどもの食欲は波があり、残食も出ます。調理員とは、医療的ケアや発達特性等の特別な配慮が必要なこどもの育ちや支援の方向性を共有しています。直営体制である強みを生かし、施設内研修にも参加してもらっていますが、発達支援について知ることで調理が担う役割の大切さが分かるようになり、前向きに取り組んでもらえています」

 島田さんの今後の目標は、持続可能な食事提供運営と、地域やライフステージを越えたつながりをつくることだといいます。
 「特別な配慮が必要なこどもの食事支援は、卒・退園したから終わりではありません。地域とのつながりができ始め、法人内の管理栄養士・栄養士の配置がない児童発達支援施設からも食事支援や保護者支援の相談を受けており、個別の食事支援のニーズと支援のプロセスを知ってもらう必要性を現場で感じています。県内の児童発達支援センター同士の横のつながりについても施設長に提案し、管理栄養士同士が情報交換をできる輪をつくってもらうことができました。こうした連携を広げていきながら、一人でも多くの若い管理栄養士、管理栄養士を目指す人に特別な配慮が必要なこどもと家族が健やかに、その人らしく生きていくための食事支援の重要性を知ってもらい、仲間を増やしていくために尽力できればと思います」

プロフィール:2002年長野県短期大学食物栄養学科卒業。病院、保育所での勤務を経て、2013年より現職。2021年松本大学大学院修士課程修了。)小児栄養分野管理栄養士、公認スポーツ栄養士。長野県栄養士会所属。

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