【厚生労働省】高齢者の口腔・摂食嚥下機能の支援について調査結果を公表
2017/02/03
ニュースのポイント
- 「最期まで自分の口から食べることの支援」について5市町の取り組みを公表
- 病院や特別養護老人ホームで管理栄養士が摂食嚥下機能評価に関わり、より適した食事支援を考える
- チェックシートで高齢者に食事内容と食べにくさを自覚してもらう工夫も掲載
高齢者の口腔機能および摂食嚥下機能の維持・向上、すなわち「最期まで自分の口から食べること」の支援については、高齢者や家族がその重要性や予防効果についての認識が少ないこと、自治体などでの低栄養予防や口腔ケアの指導が広まっていないことなどから、全国的にサポート体制が十分に整っているとは言い難い。
そこで厚生労働省では、高齢者の口腔機能および摂食嚥下機能の支援を先進的に取り組んでいる5つの自治体を調査し、その取り組みを公表した。選ばれたのは、地域高齢者を積極的に支援している東京都大田区、東京都新宿区、千葉県柏市、富山県南砺市、岡山県鏡野町。各地域の特性などを踏まえた介護予防事業や専門職のサポート体制について、今回の報告書にまとめられている。
介護予防事業としての取り組みについては、各自治体で歯科衛生士や管理栄養士による口腔ケア講座、低栄養予防講座などが行われているが、その対象となる高齢者が参加しないことには意味がない。講座運営のための工夫として、南砺市では老人会などの高齢者グループに介護予防出前講座として専門職を派遣しており、鏡野町では地域包括支援センター職員が高齢者の自宅を訪問して参加を呼びかけ、開催時には会場への送迎も行っている。また、南砺市、鏡野町、柏市では介護予防教室の運営や参加を呼びかける地域サポーターを養成しており、自治体と高齢者の隔たりを埋める役割を担っている。
管理栄養士の取り組みとしては、大田区、南砺市、鏡野町では特別養護老人ホームや病院の入所者、患者に対して歯科医師とともに管理栄養士らが摂食嚥下機能評価をしており、新宿区では摂食嚥下機能支援事業「ごっくんプロジェクト」の中で管理栄養士による居宅療養管理指導件数が261件(平成25年度)から299件(平成27年度)に伸び、在宅療養に関わる一専門職として位置づけられている。
また、柏市ではフレイル(虚弱)予防事業は栄養(食・口腔機能)、身体活動、社会参加の三位一体で取り組むことを提唱しており、自己チェックの1つ「イレブン・チェック」の冒頭に「健康に気をつけた食事を心がけているか」、「野菜料理と肉または魚を毎日2回以上食べているか」、「たくあんくらいの固さの食品が噛み切れるか」などの質問を並べ、高齢者に食事内容と食べにくさへの関心を持たせている。このイレブン・チェックのほか、新宿区の「ごっくんチェック表」など、口腔・摂食嚥下機能の低下を早期に発見するためのツールも報告書には掲載されている。
「最期まで自分の口から食べる」ための支援は自治体、医療機関、地域の多様な専門職が連係して体制づくりをしていくことが求められている。この報告書では、「食べること」を支援している専門職の意見等の欄に管理栄養士・栄養士のコメントが掲載されていない。しかし、管理栄養士・栄養士は「食べること」の支援になくてはならない専門職であることから、高齢者のどの場面で支援の一助を担っていくかを、それぞれが考えて行動していく必要がある。