【厚生労働省】高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に関する有識者会議報告書発表
2018/12/07
ニュースのポイント
- 後期高齢者の特性に応じたきめ細やかな支援が難しい現状を指摘
- 切れ目のない支援の実施のため、後期高齢者医療広域連合と市町村の連携を強化
- 高齢者の多様な課題に対応するためには、管理栄養士等の医療専門職による対応が不可欠
日本の平均寿命は世界最高水準に達しているものの、「健康寿命」の延伸についてはいまだに課題が多く存在している。政府は、2018(平成30)年6月に閣議決定をした経済財政運営と改革の基本方針2018(いわゆる骨太の方針)において、「高齢者の通いの場を中心とした介護予防・フレイル対策や生活習慣病等の疾病予防・重症化予防、就労・社会参加支援を都道府県等と連携しつつ市町村が一体的に実施する仕組みを検討するとともに(中略)、健康寿命の地域間格差を解消することを目指す」と発表。これを受けて、厚生労働省保健局は「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に関する有識者会議」を開き、同会議での検討内容をまとめ、12月3日に報告書として公表した。
この報告書ではまず、75歳以上の後期高齢者の保健事業と介護予防の現状を示し、後期高齢者についてはその特性に応じたきめ細やかな支援の実施が困難な状況であることを問題提起。そのうえで、高齢者の疾病予防・重症化予防を効果的に実施していくためには、市町村が実施している国民健康保険の保健事業の取り組みと、後期高齢者医療制度の保健事業の取り組みを効果的に接続させていく必要があると指摘している。
そのため、今後は後期高齢者医療制度の保険者であり財政運営責任者である後期高齢者医療広域連合と市町村との連携内容を"明示すること"を求め、市町村において介護保険の地域支援事業や国民健康保険の保健事業と一体的になって高齢者の心身に対する課題に対応すべきとしている。
具体的な実施内容と体制整備の中で、事業全体のコーディネートやデータ分析、高齢者の通いの場への積極的な関与を図るために、地域に管理栄養士や保健師、歯科衛生士といった医療専門職を確保できるよう市町村に対して交付する財源を確保する必要があるとしている。また、「地域の医療職能関係団体との協力が不可欠なことから、三師会(医師会、歯科医師会、薬剤師会)や看護協会、栄養士会、歯科衛生士会の協力を得ながら、保健事業と介護予防の一体的な実施を適切に展開していくことが必要である」と、当会の関わりの必要性も明記された。
この報告書は社会保障審議会の医療保険部会と介護保険部会に報告され、今後、国民健康保険法、介護保険法等が改正される見込みである。高齢者を対象とする保健事業と介護予防事業の一体的な実施に向けて、管理栄養士はその分野の知識と技術、および他職種との連携をさらに強化しておくことが必須だ。