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【東京栄養サミット2021レポート #02】食事・人材・エビデンスの3つに立脚した日本の栄養政策がつくる未来

「東京栄養サミット2021」レポート ♯02

【公式サイドイベント】ニッポンの栄養100年と未来に向けた取り組み

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 2021年12月7日(火)、8日(水)、「東京栄養サミット2021」が開催され、公益社団法人日本栄養士会は公式サイドイベントとして「ニッポンの栄養100年を、世界へ 世界の栄養課題の撲滅に向けて、いま、日本栄養士会が果たすこと」を開催しました。
 この公式サイドイベントでは、日本栄養士会が世界の栄養不良の撲滅に貢献するために、コミットメント「持続可能な栄養改善基盤の構築のための、食・栄養の専門職の養成と配置」を発表するとともに、日本のこれまでの栄養政策や、その最たる実践の場である学校給食の現状が報告されました。

世界に誇る日本の栄養政策の成果

 オープニングでは厚生労働省が作成した動画が流れ、日本の栄養政策の歩みが紹介されました。その後の来賓挨拶では、厚生労働大臣政務官の島村大氏がメッセージビデオで、「日本は戦前・戦後の食料難による低栄養、経済成長に伴う過栄養、さらに近年は『栄養不良の二重負荷』に対する取り組み等、各時代の栄養課題に合わせた栄養政策を推進してきました」と語り、具体的には「主食・主菜・副菜を基本とした『食事』、管理栄養士・栄養士等の『人材』の養成と全国への配置、国民健康・栄養調査等の科学的な『エビデンス』の3つを重視した栄養政策を展開することによって、世界一の長寿国の実現に寄与してきました」と、その成果を振り返りました。さらに、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大によって世界各地で経済格差が拡大し、食料へのアクセスの悪化が生じていることによる、栄養不良の人口の増加を示唆したうえで、「日本の誇る栄養士制度を世界に向けて発信し、『誰一人取り残さない』持続可能な社会を実現していきましょう」と呼びかけました。

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 これを受けて、日本栄養士会の鈴木志保子副会長が、「日本の栄養政策を推進する管理栄養士・栄養士と日本栄養士会」を紹介。日本では管理栄養士・栄養士が行政、医療、福祉、学校、社員食堂、研究機関、さらには地域にも配置されていることを冒頭に説明し、日本が1926年に世界に先駆けて栄養の専門家である「栄養手」を誕生させ、1945年には職能団体である「大日本栄養士会(現:日本栄養士会)」を創設したこと、戦後間もなく栄養士法、栄養改善法といった栄養に関連する法整備も行い、1961年には国際栄養士連盟に加盟したこと等、管理栄養士・栄養士が日本の栄養政策を推進させてきた経緯を詳説しました。
 近年では、東日本大震災を機に、災害時の食と栄養の支援を担う「日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT:The Japan Dietetic Association-Disaster Assisstance Team)」を結成したことや各地域に認定栄養ケア・ステーションを整備したこと、さらには国民と栄養をつなぐ日として8月4日を「栄養の日」と制定したこと等、より国民にとって身近で頼れる存在となるべく活動範囲を広げていることを紹介しました。そして、「日本栄養士会は、日本の栄養100年で培ってきた知見や経験を活かして、諸外国の栄養改善にも大きく貢献していきます」と、明言しました。

栄養改善の経験と技が作り上げた日本の「学校給食」

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 続いて、文部科学省初等中等教育局・食育課学校給食調査官の齊藤るみ氏が登壇し、食育推進の場としての学校給食の充実について発表しました。日本では、1898年に山形県の私立小学校で貧困の児童を対象に無償で食事が提供されたことが、学校給食の始まりとされています。その後、学校給食は全国に広まり、1954年には「学校給食法」が成立。2005年には管理栄養士・栄養士の有資格者で教員免許を持つ「栄養教諭」制度がスタートしました。現在では全国の国公私立の小学校の98.5%、中学校の86.6%以上で、主食・主菜・副菜・牛乳が揃う完全給食が実施されています。
 日本の学校給食の特徴として、学校給食の実施に必要な施設及び設備に要する経費などは学校設置者の負担とし、それ以外の食材費などは保護者の負担とすることが、「学校給食法」で定められている点が挙げられると、齊藤氏は説明しました。「学校給食では地元の農家が生産した野菜や果物を学校給食で利用して、地場産物の活用を推進し、児童生徒と地域との絆を深め、食への感謝の念を育てることも大切にしています」と付け加えました。

 さらにその給食を日々提供している栄養教諭として、栃木県栃木市立大平中学校、大平学校給食センター所属の中田智子氏が「栄養教諭の主な仕事」を紹介し、①児童生徒の栄養管理と給食管理、②学校給食における地場産物の活用推進、③教科等での指導、④給食の時間の指導、⑤就学時前や入学後の個別的な相談指導の5つを挙げました。
 中田氏は、自身が学校給食施設の建設にも関わったエピソードや災害時の支援経験も紹介し、「栄養教諭は地域と子どもたちの未来を支援する立場であり、地域を食でつなぐ役割も果たしています」と、栄養教諭の広範な活動を示しました。

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あなたの街にも行きます「ニュートリション・エデュケーション・カー」

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 最後に、日本栄養士会の下浦佳之専務理事から、新たに導入される「ニュートリション・エデュケーション・カー」と、さまざまな現場で活躍してきた災害支援車両(JDA-DAT号)の紹介がありました。

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 1955年頃の日本では、全国各地で「栄養指導車」が走っていました。栄養指導車は、戦後の国民の栄養対策を推進させるために、各都道府県に1台以上が整備され、当時の厚生省の通知で、「単なる調理技術の指導車とすることなく、全般的な食生活改善の先導車としての意義をもたせること」と明記されていました。栄養指導車には機動的な調理講習会ができるように調理台を備えていたことから「キッチンカー」とも呼ばれ、新聞やラジオなどで紹介されると、各市町村ではその巡回を待ちわびるようになったといいます。今でも日本栄養士会には栄養指導車の周りに人々が群がる写真が残っています。
 日本栄養士会では、この栄養指導車を「ニュートリション・エデュケーション・カー」(以下、エデュケーション・カー)として、60年余りの時を経て再始動させることにしました。今回の公式サイドイベント会場となった東京国際フォーラムの地上広場では、エデュケーション・カーが初めて披露されました。木目調の車内には冷蔵庫・水道を備えたミニキッチンや、対面で話ができるようなテーブルも設置されています。収納スペースも広く、食料支援の物資の運搬にも役立ちます。
 エデュケーション・カーは栄養ケア活動を目的として、これまでのJDA-DAT号とともに、栄養指導、防災イベント等における展示や講演、パッククッキングのデモンストレーション等の依頼があった場所を訪問し、管理栄養士・栄養士とともに活動します。日本全国どこでも依頼が可能で、将来的には海外からの依頼にも対応することが構想されています。

管理栄養士・栄養士が訪問するエデュケーション・カー、JDA-DAT号の利用申請を申し込む

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 東京栄養サミット2021のサイドイベントで、100年の歴史を持つ日本の栄養政策とその実践「ジャパン・ニュートリション」が広く紹介され、国外への貢献もコミットメントとして発表されました。今後も管理栄養士・栄養士の国内外での活動に期待が高まっています。

■レポートの続き(#03)を読む

■「東京栄養サミット2021」レポート#04を読む
■「東京栄養サミット2021」レポート#01を読む

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