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  3. 平成30年度診療報酬・介護報酬同時改定 医療介護連携に向けて、今、現場で必要なことと、その視点~第37回 食事療法学会レポートVol.2~

平成30年度診療報酬・介護報酬同時改定
医療介護連携に向けて、今、現場で必要なことと、その視点
~第37回 食事療法学会レポートVol.2~

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 団塊世代が75歳以上となる2025年を前に、診療報酬・介護報酬の「事実上最後の同時改定」となった今改定。今後の社会経済の変化に向けて、質が高く効率的な医療提供体制を整備するとともに、新しいニーズにも対応できる医療の実現をめざして、診療報酬本体は+0.55%の改定となりました。3月3日(土)、4日(日)に開催された食事療法学会では、厚生労働省保険局医療課課長補佐で管理栄養士の資格を持つ塩澤信良氏による情報提供「平成30年度診療報酬改定(栄養関係)の概要」に続いて、塩澤氏と(公社)日本栄養士会医療事業部担当理事の石川祐一氏、同福祉事業部企画運営委員長代理の加藤すみ子氏による鼎談、その後に会員対話を設け、今改定の理解を深めました。

次回2020年度診療報酬改定に向けて
早急に取り組みをスタートさせよう

 鼎談では、石川理事がまず、「今回の診療報酬改定では、前回の栄養食事指導料の評価見直しのように医療機関に勤務する大半の管理栄養士の直接的評価につながるような改定とはなりませんでした。しかし、今回の改定は次回2020年の改定に向けての切り口ととらえることができます。病院管理栄養士ビジョンを達成するための足がかりとなった改定であったと捉えてほしい」と会場の参加者に呼びかけました。

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 それを受けて、塩澤氏が、「例えば今回は、回復期リハビリテーション病棟入院料1については、専任の常勤管理栄養士1名以上の配置(努力義務)やリハビリテーション実施計画書等の作成への参画等が要件化されましたが、同じ取り組みを、例えば回復期リハビリテーション病棟入院料2や3などの医療機関でも実施していただいて、その結果が論文データとして公表されれば、それが新しい知見となってくる可能性もあります」と話すと、石川理事が「加算の対象とならなかった医療機関であっても、実態を見せていかないと次につながらない、ということですね。皆で明日から新たな取り組みをしていきましょう」と付け加えました。

 続いて、石川理事は今後危惧される点として、「在宅患者訪問褥瘡管理指導料」の要件緩和を挙げ、「この要件は、当該算定要件に対し、同行する管理栄養士がいないことから、非常勤管理栄養士で算定可能となった。しかしこれでも、在宅患者訪問褥瘡管理指導の件数が伸びなかった場合には、在宅の褥瘡管理に関われる管理栄養士は存在しないのでは、と整理されてしまうのではないか?」と危機感を示しました。これについて塩澤氏は、「ありえます」と答え、「今回の要件緩和は、働き方改革の一環として、人材の有効活用を意図したものです。在宅での褥瘡の管理指導のニーズは確実にあると思いますので、今回の要件緩和を機に、在宅褥瘡対策チームの一員として管理栄養士の更なる活躍に期待しています」と強調しました。

初めて福祉事業部のトップが登壇
医療施設と介護保険施設の管理栄養士連携

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 同福祉事業部企画運営委員長代理の加藤すみ子氏も加わっての鼎談に、石川理事は「食事療法学会に福祉事業部の方が登壇されるのはおそらく初めてでありすばらしい前進」と前置きしたうえで、「介護報酬に『再入所時栄養連携加算』ができ、医療施設の管理栄養士と介護保険施設の管理栄養士の新しい取り組みが始まります。加藤委員長代理から医療施設の管理栄養士にお願いしたいことがあれば......」と提案すると、加藤委員長代理は「医療施設の管理栄養士の皆さんは非常にお忙しいと思いますので、医療施設と介護保険施設の管理栄養士が個別に会う時間を改めて設けていただくよりも、退院時の栄養指導やカンファレンスに施設の管理栄養士も同席させていただけたらありがたいです。お互いが顔の見える間柄になれば、地域包括ケアシステムの1つとして力を発揮できると思います」と述べました。これを受けて石川理事は、「これまで医療施設の管理栄養士は基本的に自施設で頑張ってこられたと思いますが、今後は地域の中で多くの関係者と連携をとり、地域を一体化させていくことが重要。地域の介護保険施設等、介護現場の管理栄養士・栄養士との連携もさっそく始めてください」と、参加者に檄をとばしました。

 また、今回の改定で評価対象になった栄養管理に関する情報提供について加藤委員長代理は、「医療施設の管理栄養士の方が書いてくださる栄養情報提供書を、私たち福祉の管理栄養士も十二分に活用できるスキルを身に付けるとともに、ゆくゆくは福祉施設や医療施設、地域との切れ目のない栄養連携のために、栄養情報提供書を積極的に作成するようにしていきたい」と抱負を述べ、新年度に福祉事業部で研修会を実施することを報告しました。
 これを受けて塩澤氏は、「管理栄養士同士のコミュニケーションも大事ですが、先ほど述べた働き方改革、人材の有効活用の観点からすると、管理栄養士と他職種、場合によっては他職種同士の栄養情報の連携もありえます。こうした中、医療施設の管理栄養士の方々にとっては、栄養の専門家として自分たちに何ができるかの"見える化"を、施設内、地域を問わず、意識してやっていくことが非常に重要になってくるかと思います」と訴えました。
 石川理事は、「次回改定で点数を獲得していくための実態をつくるのは紛れもなく私たち自身。結果を出したデータや論文があれば、日本栄養士会に届けてください。我々の成果をもっと表に出していきましょう」と呼びかけました。

回復期リハ病棟、緩和ケア
会員対話で取り組みを共有

 会員対話では「平成30年医療介護同時改定~医療と介護をどう繋ぐか~」をテーマに行われました。まず座長を務めた医療事業部企画運営副委員長の原純也氏が、「今回の診療報酬改定で新たに点数がついた項目についてすでに取り組んでいる医療機関の方に発表していただいて、それを共有し、今後に活かしていきましょう」と、会員対話の目的を説明しました。

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 回復期リハビリテーション病棟での取り組みについては、「専任で病棟(52床)担当の管理栄養士を置き、カンファレンスに参加。今後はリハ科だけのNSTの立ち上げも検討中。外泊前栄養指導や退院時栄養指導等を実施している」、「病棟(48床)担当の管理栄養士を置き、栄養指導件数は月20件程度。NSTの専従要件が緩和されたので、リハ科に専任を配置できる」などの発表がありました。また、リハビリテーションで増加する運動量とそれに伴う栄養量の確保については、「経済的に余裕のない患者さんも多いため、退院前にスーパーで売っている鶏ささみやベビーチーズ等の金額とたんぱく質量の一覧を見せている」という報告もありました。

 栄養情報提供書の作成については、参加者のうち3割程度が取り組んでおり、「転院する患者さんすべてに栄養情報提供書を送っているが、退院時にケアマネジャーに説明する場には立ち会っていなかった。今後は参加するようにして、全患者さんが退院する先に栄養情報を知らせていきたい」、「栄養情報提供書を使うこともあったが、電話連絡で済ませることもあった。今後は確実に使っていきたい」という意見が出ました。

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 緩和ケア診療加算の要件見直しについては、「医師、看護師、薬剤師、管理栄養士でチームを構成しているが、精神科医師がいないために算定できていない」という意見が挙がり、これに対し石川理事は「当病院もまったく同じ条件で算定されませんが、管理栄養士がチームに加わることができる施設があるのであれば、そのことが患者に有益な結果になることを示していく、それが次の改定で評価されることにつながることも見据えるべきではないか」と答えました。そして、石川理事が「鼎談の冒頭で話したように、今回の改定は病院管理栄養士将来ビジョン達成のための切り口として評価されているということ。今回の評価が一部の施設ではなく、さらに多くの施設が対象となるように、私たち管理栄養士が実態を見せていく必要があります。その方策として次期2020年改定に向けて、日本栄養士会では実態調査を実施します。各医療機関の皆さんにできるだけ多く回答していただくことが、中医協(中央社会保険医療協議会)へ提出する資料の価値を高めることになります。ぜひご協力をお願いします。そして、さっそく2年後に向けて、患者さんのために新しい取り組みをしていきましょう」と締めくくりました。

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