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【講演レポート #01-4】管理栄養士は、慎重なさじ加減が必要

「平成30年度全国栄養士大会」講演レポート ♯01-4

管理栄養士は、慎重なさじ加減が必要

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3講演を終えて、中村氏、小松氏、阿部氏の3名でそれぞれの講演に関して意見交換を行いました。

中村 私たちはメタボ対策を始める際に、糖尿病や脂質異常症といった疾病を予防することを目的としたために、臨床検査値を重視してきました。しかし、フレイルを予防していくことを考えると臨床検査値だけで評価をするのは不十分だったということがわかってきたのです。

小松 そうですね。メタボ対策とともにフレイル対策をしていくには中性脂肪の値が下がった、血圧が下がっただけではダメで、きちんと体組成も見ていくことが大事です。生体電気インピーダンス法が有効と言われており、製品として手に入りやすいものも増えてきましたから、栄養指導の際に使用して体組成をモニタリングしながら体重減少を進めていくことも考えましょう。製品が安かろう、悪かろうではいけませんが。

阿部 体組成計は一般に売られているものでも精度がずいぶん上がってきました。体重だけでなく体組成を量ることで、筋肉量を「知ること」ができる。血糖値もそうですよね。血糖値を知り、どんなときに血糖値が上がりすぎるのかを理解することで、結果として血糖値のコントロールにつながった。体組成計にはまだ精度が十分に高いとは言えないものもありますが、意識づけという意味では効果があると思います。

中村 小松先生のお話のなかで、減らすのは脂肪だけであって筋肉ではないということ、あまりにも早急に体重を落とすことでフレイルを助長することになりかねないという危機意識を得ました。筋肉量については、我々管理栄養士は身体計測をするのに上腕三頭筋部を測ってきましたが、上腕の筋肉だけで全身の筋肉量を代表させるというのは乱暴だと思います。新しいパラメータが必要と感じていて、私が注目しているのは顔の側面の「側頭筋」です。咀嚼力とも関係してきますし、「年をとったなぁ」と感じるのは側頭筋が落ちて顔の印象が変わってきたときだと思います。側頭筋をどのように測定するかは今後の課題です。また、阿部先生のお話から、メタボ対策からフレイル対策のギアチェンジは「何歳」と年齢で判断するのは難しいということですね。

阿部 フレイルに到達する年齢に30歳以上の差が出るということは、若いうちにフレイルになる人には何らかの栄養失調が存在すると言えると思います。ですので、この格差を縮めることが必要で、そこは管理栄養士の皆さんに関わってくるのではないでしょうか。栄養指導の質がもう一段上がることを期待しています。

中村 メタボからフレイルへのギアチェンジについては、まだエビデンスが少ない状態ですが、目の前には患者さんが存在します。管理栄養士は患者さん個人がもつさまざまな情報から判断し、メタボ対策とフレイル対策の両方に慎重なさじ加減をして、エビデンスを構築していく必要があります。この仕事こそ、これからの管理栄養士の仕事ですから。

■講師プロフィール
阿部圭一(あべ・けいいち)
東京大学農学部農学系研究科博士号取得(農学)。サントリー株式会社に入社後、中央研究所勤務。サントリー価値フロンティアセンター栄養科学グループ長、サントリーグローバルイノベーションセンター(株)取締役イノベーション創発部長等を歴任。2017年より現職。

小松龍史(こまつ・たつし)
徳島大学大学院栄養学研究科栄養学専攻博士後期課程修了。保健学博士。産業医科大学病院での勤務を経て、徳島大学医学部、お茶の水女子大学生活科学部、大阪府立大学総合リハビリテーション学部等で助教授、教授として従事。2007年より同志社女子大学生活科学部教授、2012~18年に(公社)日本栄養士会会長を務める。

中村丁次(なかむら・ていじ)
徳島大学医学部栄養学科卒業。聖マリアンナ医科大学病院、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院に勤務し、栄養部部長を歴任。2003年より神奈川県立保健福祉大学教授。栄養学科長、保健福祉学部長を経て、2011年より同大学大学長。2018年より(公社)日本栄養士会会長。医学博士。

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講演資料ダウンロード
当日の講演資料は下記よりダウンロードいただけます(講演資料につきましては、無断での複写・転用・転載はご遠慮ください)。
講演レポート#01-1 KNKプロジェクト~栄養障害の二重負荷の解決をめざす~「メタボからフレイルへのギアチェンジ」
講演レポート#01-3 メタボからフレイルへのスイッチング フレイル対策の重要性と栄養

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