【保育施設の現場】園児とふれあうことで生まれる、成長をサポートする喜び
2023/09/15
管理栄養士・栄養士の「就活」と「働く」がリアルにわかる!
訪問! 現場で活躍するセンパイ #08
鈴木菜津さん(川崎市社会福祉事業団 KFJ多摩なのはな保育園、管理栄養士)
食を通して、その人らしく楽しく生活をしていくことに貢献したいと福祉施設を選んだ鈴木さん。目標を明確にする就活方法、一人職場の難しさとやりがいなど、管理栄養士としての日常を語ってもらいました。
プロフィール:
昭和女子大学卒業。川崎市社会福祉事業団 KFJ多摩なのはな保育園(兼務として障がい者施設はなもも・はなみずき)で管理栄養士として勤務。勤続年数3年。
現在のお仕事に就くまでのことを教えてください
管理栄養士になりたいと思ったきっかけ
母が看護師として働く姿を見て育ち、自分もなにか資格を持って働きたいと思っていました。中学生のとき、母の知り合いに管理栄養士を勧められ、漠然とですが意識するようになりました。高校で進路を決める際は、心理学の道に進むか迷いましたが、こどものころから好きな「食べること」で人を支援したいと考え、管理栄養士を目指すことを決めました。
就職活動の際に苦労したこと、心がけていたこと
大学3年の3月に自己分析をすることからスタートし、「食を通して、その人らしく楽しく生活をしていくことに貢献すること」を目標にしました。 まず、「働きたい職場のイメージ」を明確にすることが第一だと考え、幅広く施設見学や説明会などに参加しました。振り返ると、この経験がとても役に立ったと思います。
就職先を福祉施設に絞り込むきっかけになったのも、施設見学です。障がい者支援施設で利用者の方が描いた絵画を拝見する機会があり、作品のすばらしさに感動するとともに、人が個々に持つ可能性に心動かされ、自身の目標と自分が働くイメージが一致する経験となりました。
複数の福祉施設を経営している法人などでは配属先を選べないことがあるので、事前に確認しておくとよいでしょう。私の場合は障がい者施設を希望しましたが、保育園の配属となりました。めずらしいケースだと思うのですが、現在の勤務先は1階が保育園、2~3階に障がい者支援施設が併設されています。そのため保育園の仕事がメインですが、障がい者支援施設の仕事も兼務しています。
学生時代の経験や勉強したことで役に立ったこと
学生時代は知識の基礎を広く網羅していく勉強ですが、基礎があるからこそ、社会に出たときに必要な専門分野を深められるのだと実感しています。
保育園には0~5歳の園児たちが130人程在園していて、一人ひとり口腔機能の発達が異なりますし、食物アレルギーを持つ園児もいます。勤務1~2年目は、前任の管理栄養士が退職せず保育補助として在籍していたので、園児が給食を食べる様子を一緒に観察しながら「この口や舌の動きができるなら、つぎの段階に進める」などアドバイスをいただきました。こうした実体験としての学びと、教科書の知識が結びついたとき、深く理解するとはこういうことかと納得しました。
食物アレルギーや、宗教等の理由により食事の配慮が必要なケースもあります。調理時の混入などの事故防止を徹底するためには「給食管理」の実習や知識が役立っています。情報や求められる対応は日々変化していくので、信頼できる最新情報を選択して、専門知識を深める努力を続けています。
今のお仕事について教えてください
現在、担当している業務
保育園では献立作成、給食管理、離乳食支援、食育活動などが主な仕事です。兼務している障がい者支援施設では献立作成、給食管理を行い、看護師さんや支援員さんと情報共有をしながら利用者に合った食形態の提供をしています。
保育園では市の統一献立、障がい者施設では献立作成ソフト上のベース献立をもとに、毎月の誕生日会、行事食、離乳食の進み具合などによって食材や献立の変更などを行っています。とくにアレルギー食には注意しています。毎年4、5月は新しい園児の入園や厨房の人事異動などで現場が混乱しがちです。この時期は原因食物を使わないように食材を変えるなどして、事故が起きないように配慮しています。
園児たちは日々成長しているので、毎日、食事風景を確認するのも大切な業務です。障がい者支援施設は保育園の業務が忙しいためなかなかいけませんが、月に1~2回は食事の様子を見に行き、スタッフとの情報交換も行っています。
仕事で大変なことや工夫していること
一人で保育園と障がい者施設を兼務しているので、業務量が多く、様々な業務を並行してこなしていく必要があります。そのため、業務を一覧化して予定の見通しをつけるようにしました。課題があれば、同じ法人の保育園の管理栄養士に聞いたり、各園の栄養士が集まる会議の議題にするなどして対応しています。また、施設の職員や調理員が相談にのってくれること、同世代の保育士と気軽に話ができることも非常に心強いです。
厨房はベテラン調理員さんも多く、1年目はとても緊張しましたが、前任者が築いたよい関係を引き継ぐことを目指しました。心がけたのは感謝をしっかり伝えることです。当たり前のことですが、忙しくてもタイミングを逃さないように意識しています。
やりがいを感じるとき
食育活動で子どもたちの反応を見られたときです。保育士と一緒に計画し、準備を進める作業は発見が多く、とても楽しいです。
昨年度は「保育園のみそ汁はどうやって作るの?」という問いかけからスタートし、だしの食育を行いました。昆布だし、かつおだし、混合だしの順に目の前でだしを取り、試飲してもらいました。昆布だしのときは「不思議な味がする」、かつおだしを飲むと「少しおいしい」、最後に混合だしを試飲すると、クラス全体で「おいしいー!」といった表情に。
毎日、食事の様子を見に行き、園児に声がけするのも食育だと考えています。野菜に手を付けない園児に「シャキッと、いい音がするから食べてみたら?」と声をかけると、パクッと食べてくれることも。こうした小さな積み重ねが幼少期の食経験の広がりにつながればうれしいですし、子どもたちとかかわる時間そのものがやりがいにつながっていると感じます。
今後の夢や取り組んでみたいこと
利用者の方と直に接する機会を、より大切にしていきたいです。こどもが偏食であるとか食べるのが遅いといった保護者の悩みを、保育士を通して聞くことがあります。個別にお答えしたいのですが、そのためにはこどもたちともっと深く関わって、問題点を把握しなければならないと感じています。これまで仕事をしてきて、こどもにとって、食事は周りのおとなを信頼できる環境で初めて成立するものだと痛感しました。園児たちとの時間を増やして信頼関係を築いていきたいです。
職場に管理栄養士は自分だけですので、どこまでやるかは自分自身の決め方次第です。きめ細かく仕事を追求していけば学ぶべきことはたくさんありますし、まずは、自分で改善点に気付くことが大事だと思います。すぐに変えられなかったとしても、気づいてさえいれば1年後、2年後にはできることもあります。何事もあきらめずにできることからブラッシュアップしていきたいと思います。
1日のタイムスケジュール
- 6:00
起床
- 7:10
家を出発
- 8:10
出勤 着替え・準備
- 8:30
朝ミーティング
- 8:45
事務仕事、食育開催時は準備
- 9:30
厨房朝礼 調理状況の確認
- 9:45
事務仕事、食育活動
- 10:45
昼食ラウンド 記録
- 12:30
休憩
- 13:30
会議、事務仕事
- 14:00
厨房訪問、事務仕事
- 15:15
おやつラウンド
- 15:45
事務仕事 保護者対応
- 17:00
勤務終了
- 19:00
帰宅、自由時間
- 20:30
夕食
- 23:00
就寝
OFFの時間や休日の過ごし方
通勤時間に1時間かかるので、その間に音楽を聴くなどしてON・OFFの切り替えをしています。リラックス方法はおいしいものを食べること、テーマパークや旅行に出かけることです。最近は北海道に生息するシマエナガにはまっており、北海道旅行の際は念願だったシマエナガソフトやラテアートを楽しんでリフレッシュしました。
※写真は旅先での風景